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家計調査に見る2020年の食費内訳。激減の外食。素材で明暗分かれる内食。酒類の活路はどこにあるのか。

松浦達也編集者、ライター、フードアクティビスト
(写真:アフロ)

2019年まで日本の外食産業は(労働問題を除いては)順風満帆でした。東京は「星の数、世界一」と胸を張り、訪日外国人は牛丼を食べて「この価格でこのクオリティ」と驚嘆し、フランス人やイタリア人が自国の料理を東京で食べて「自国並かそれ以上」という感想を漏らすのも珍しいことではなくなっていました。

しかし、2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延により、状況は一変しました。訪日観光客は姿を消し、緊急事態宣言の発出と前後して仕事は在宅勤務へと移行し、日常的に外食していた人々の食生活も大きく変化しました。

では、実際日本人の食生活はどのように変わったのでしょうか。この2月に発表された2020年の家計調査(総世帯)から、2020年に日本人の食生活がどう変わったかをひもといてみたいと思います。本稿お最後に、前年と10年前の比較のため、2010年、2019年、2020年の1世帯当たりの主な品目についての年間支出金額の表画像をUPしておきます。細かいのでDL、画像保存してお使いくださいませ。

家計調査でも浮き彫りになった外食業界のダメージ

まずは概況です。2020年の一般外食費(給食等を含まない外食費)は11万5321円。前年比マイナス29%という大幅ダウンです。ちなみに10年前、2010年の一般外食費は15万1538円。ここからじわじわ上がってきて、2019年に16万2606円まで来たところからの大幅ダウンとなっています。家計調査は何度か調査方式が大きく変わっているので、単純比較はできませんが、総世帯での調査が始まった2002年の一般外食費は15万3940円ですから19年前と比較しても3割減です。

参考までに、それ以前の「2人以上の世帯」での調査における「外食」(学校給食を含む)で比較すると1985年の月間外食費が1万427円ですから年額換算すると12万5124円。対して2020年の「外食」は12万1060円ですから、あくまで参考値に過ぎないとはいえ、36年以上、時計の針が巻き戻ったことになります。

では内訳を見てみましょう。まず一般的な外食である日本そば・うどん(-24%)、中華そば(-22%)、和食(-22%)、中華食(-26%)、洋食(-29%)など、日常的な外食で軒並み-20%台となっています。

そしてダメージの大きさが窺えるのが飲酒代。前年の2万7190円から1万3141円で5割以上のマイナスとなっています。居酒屋の苦境は家計調査にも現れています。この状況では、餃子酒場として売り出しながら「酒場」という看板を外した「ダンダダン」のような事業者が出てくるのも無理からぬことなのかもしれません。

もっとも外食のなかでもダメージには差があります。例えば、すし(外食)は-13%と他の業態よりも多少ダメージが少なく済んでいます。またハンバーガーは、一般外食のなかで唯一前年比プラス11%となっています。両者については「外食」と言いつつデリバリーや持ち帰りなどの数字が混入している可能性が高いのですが、とはいえそれはテイクアウトが増えた他の業態も同じこと。「子ども」や「ファミリー」と一緒に楽しめる「ハレ」の食事需要の高さが伺えます。

肉食↑魚食↓。内食における悲喜こもごも

そして「食」全体で見ると、外食が減った分が内食の肉類や穀類、調理食品や酒類に振りわけられる形となっています。

例えば肉類などは2010年から2019年に9年間かけて14%伸ばすのがやっとだったのが、2019年から2020年の1年間で11%伸びています。もっとも内訳を見ると、牛肉(8%)、豚肉(11%)、鶏肉(11%)と比較的リーズナブルなものに手が伸びるという図式になっていて、先行きの不透明感からサイフの紐はかたくなっていることが伺えます。

そしてコメは2008年に世界的な穀物価格の暴騰が起きて以来の異変が起きました。

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編集者、ライター、フードアクティビスト

東京都武蔵野市生まれ。食専門誌から新聞、雑誌、Webなどで「調理の仕組みと科学」「大衆食文化」「食から見た地方論/メディア論」などをテーマに広く執筆・編集業務に携わる。テレビ、ラジオで食トレンドやニュースの解説なども。新刊は『教養としての「焼肉」大全』(扶桑社)。他『大人の肉ドリル』『新しい卵ドリル』(マガジンハウス)ほか。共著のレストラン年鑑『東京最高のレストラン』(ぴあ)審査員、『マンガ大賞』の選考員もつとめる。経営者や政治家、アーティストなど多様な分野のコンテンツを手がけ、近年は「生産者と消費者の分断」、「高齢者の食事情」などにも関心を向ける。日本BBQ協会公認BBQ上級インストラクター

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