2030年、和牛の輸出額1112%増は達成できる目標だったのか

(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

先日、政府「農林水産物・食品の輸出額を2030年に5兆円とする政府の新目標の内訳」を日本農業新聞が報じました。

https://www.agrinews.co.jp/p50311.html

「えっ。5兆円……?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、もともと「2030年に5兆円」という目標値は2014年に政府がまとめた農業分野における成長戦略の時点で掲げられていた目標値です。

その時点で前提として「2019年に1兆円」という目標が掲げられていましたが、実際の2019年実績は9121億円に終わり、目標には未達。届かなかったことも残念でしたが、何より残念だったのは結果が昨年2019年前半には予想されていたにも関わらず、目標の下方修正などが一切ないまま「未達」となってしまったことです。

短期の目標を達成できなかったのなら、民間企業ならばその先の業績予測の下方修正、そして新たな目標の設定が必要です。しかし本件では2019年の目標に届かなかったのに、「2030年5兆円」という目標は据え置かれています。

今回の新型コロナウイルス対策でも散見されましたが、日本の社会は目標設定を間違えたときに、どうにか辻褄を合わせ(ようとし)て、過剰な自己弁護、現状肯定に走る傾向があります。人間は間違える生き物なので間違えたら修正するなり、お詫びして訂正するなりして新たな目標を立て直せばいいはず……。なのですが、失敗からの再起という慣習のないお国柄。間違った土台の上にグラグラの柱を建て、グダグダの建造物を建ててしまうという光景をあちこちでお見かけするようになりました(注:建設業界のお話ではありません)。

輸出額12倍増という驚きの見積もり

そして"無修正"以上に驚いたのが、その2030年目標の「品目別」の内訳でした。

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現時点で海外向けに売上297億円の国産牛肉を11年後に、3600億円にしようという強気な目論見です。現在の輸出額の12倍以上。この時点でコロナ禍により世界経済の減速は十分わかっていたはずですが、仮にそれを抜きにしたとしてもこの目標は達成される可能性はあったのでしょうか。まずは基本設計がどうだったのかを考える必要があります。以下に関連するデータや事象を挙げながら、考えていきたいと思います。

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食のブランド化と多様化が進むなか、「安全」で「おいしい」食とは何か。生産地からレストランの最前線まで、食にまつわるすべての現場を巡り、膨大な学術論文をひもとき、延々と料理の試作を繰り返すフードアクティビストが食とグルメにまつわる奥深い世界の情報を発信します。客単価が二極化する飲食店で起きていること、現行のA5至上主義の食肉格付制度はどこに行くのかなどなど、大きな声では言えない話をここだけで話します。

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東京都武蔵野市生まれ。食専門誌から新聞、雑誌、Webなどで「調理の仕組みと科学」「大衆食文化」「食から見た地方論/メディア論」などをテーマに広く執筆・編集業務に携わる。テレビ、ラジオで食トレンドやニュースの解説なども行い、食にまつわるコンサルティングも。著書に『大人の肉ドリル』『新しい卵ドリル』ほか。共著のレストラン年鑑『東京最高のレストラン』(ぴあ)審査員、『マンガ大賞』の選考員もつとめる。経営者や政治家、アーティストの書籍やWeb企画など多様なコンテンツを手がけ、近年は「生産者と消費者の分断」、「高齢者の食事情」などにも関心を向ける。日本BBQ協会公認BBQ上級インストラクター

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