Yahoo!ニュース

リーチ主将「2試合目に非常に大きな試合」ーラグビーW杯フランス大会

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)
2023年ラグビーW杯フランス大会をにらむリーチ・マイケル(東芝)=トップリーグ(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 2023年にフランスで開催されるラグビーワールドカップ(W杯=9月8日開幕)の試合日程が決まった。1次リーグでD組の日本(27日時点で世界ランキング10位)は中6日の第2戦(9月17日・ニース)で強豪のイングランド(同3位)と対戦することになった。

 27日のトップリーグの試合後、日本代表主将のリーチ・マイケル(東芝)は日程の第一印象を聞かれると、「2大会連続で、2試合目に非常に大きな試合がある」と言った。

 「1試合目がアメリカグループ(地区2位)、2試合目がイングランド。準備の面では前回大会と一緒の感じになる。まずは1試合目にしっかり勝つことが大事になる」

 W杯は計20チームが出場し、1次リーグは5チームずつの4組に分かれて総当たり戦を行う。日本は9月10日の初戦(トゥールーズ)でアメリカ地区2位(カナダか米国が有力)、第2戦ではエディー・ジョーンズ前日本代表監督率いるイングランドと、中10日の28日の第3戦(トゥールーズ)ではオセアニア地区1位(トンガかサモアが有力)、中9日の10月8日の第4戦(ナント)ではアルゼンチン(世界ランク9位)と対戦する。

 選手の安全確保のため、フランス大会から1次リーグの日程を1週間延長し、全チームが中5日以上の試合間隔を持てるようになった。つまり各チームが調整期間については有利不利がなく、フェアになったということだ。

  リーチも言葉を足した。「(公平な試合間隔は)すごくいいことだと思う。やっとフェアな状態で戦える。いろんなチームが勝つチャンスをつくれるんじゃないか」と。

 これまでの日程は時にアンフェアだった。例えば、日本は2015年W杯で南アフリカの劇的勝利から中3日でスコットランド戦に臨み、惨敗した。逆に日本開催の2019年W杯で日本は日程的に恵まれ、勝負どころのアイルランド戦は日本が中7日だったのに対し、相手は中5日。1次リーグ最終戦のスコットランド戦は日本が中7日だったのに対し、相手は中3日で戦い、ともに快勝して初めてのベスト8進出を決めた。

 日本ラグビー協会の藤井雄一郎ナショナルチームディレクターは26日夜のオンライン会見で、「どの国にとっても回復は重要なポイントになる」と言った。

 「中3日は(回復が)100%できない。少なくとも、強豪国とやる時には、120%出さないといけないので、しっかりした休養と戦略の落とし込みが非常に大事になる。日程に関しては間がしっかり空けば、何番目にどのチームがこようがあまり気にしない。まずは1試合1試合しっかり戦うことから始まる」

 対戦の順番を見ると、前回の2019年W杯と似た相手の強弱の流れとなっている。19年W杯ではロシア、アイルランド、サモア、スコットランドの順で第2戦と第4戦に世界ランキング上位国が並んでいた。今回も、第2戦がイングランド、第4戦はアルゼンチンとなっている。藤井氏も「(対戦相手の)感じが前回と似ている」とみている。

 「一番いい並びになったんじゃないかな。1番強いチームが2番目にきて、最初の試合の相手は(世界ランク)順位が下のチーム。前回(W杯)と同じような調整の仕方でいいんじゃないか。コーチ陣はやりやすいと思う」

 もちろん、日程の公平さは相手にとっても言えることだから、より準備力を含めたチームの実力勝負になったということだ。イングランドは初戦(9月9日)でアルゼンチンと戦ったあと、中7日で日本と、アルゼンチンは第3戦(9月30日)でアメリカ地区2位と戦ったあと、中7日で日本と対戦する。

 また、フランス大会では、選手の負担を減らすため、選手登録数を従来の31人から33人に増やすことになった。藤井氏は「単純に15人、15人で、(プラス)プロップとフッカー、スクラムハーフの専門職を3人入れることになるのではないか」と言った。

 もうフランス大会まで2年半となった。今回もチーム・スローガンは「ワンチーム」になる見通し。大会目標を聞かれると、藤井氏は「しっかり決勝トーナメントに行って、自分たちが行ったことのない場所」と答えた。つまり、初のベスト4以上だ。

 昨年は、新型コロナウイルス禍の影響ですべてのテストマッチが中止となった。今年は、さすがにそうはいかない。テストマッチを含め、どういった強化プランでチーム作りをしていくのか。加えて、どう対戦チームを分析していくのか。

 代表クラスの選手にとってはまず、レベルが上がったトップリーグでの切磋琢磨が重要となる。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

松瀬学の最近の記事