好きなことを楽しむのが一番~38歳の日野・北川の新たな挑戦

トップリーグカップで奮闘した日野・北川選手(筆者撮影)

 ラグビーワールドカップ開催に伴う変則的な日程となった今季、トップリーグカップが22日、開幕した。元ラグビー日本代表でトヨタ自動車を退団した北川俊澄(としずみ)選手が日野レッドドルフィンズのロックとしてパナソニック戦(熊谷スポーツ文化公園ラグビー場)に先発出場した。38歳の新たな挑戦。モチベーションを聞けば、「ラグビーが大好きなことです」と人懐っこい笑顔をつくった。

 29-31で試合終了。どしゃぶりの雨の中、北川選手はスタンドのファンに向かって、195センチの長身をちょこんと折り曲げ、頭を下げた。あたたかい拍手がつつんだ。

 「ラグビーはオモシロい。プレーもそうですし、終わった後の人との交流も楽しい。日野のファンの人もすごくあたたかく迎えてくれたじゃないですか。それを味わうと“また頑張ろうかな”ってエネルギーが湧き上がってくるんです」

 いつも実直、いつも謙虚。大事にしている言葉が、「好きなことを楽しむのが一番」という。実に味わい深いフレーズだ。

 「好きなことでも楽しくできないことがあるじゃないですか。それはダメでしょ。好きなことを前向きに楽しんでいくことが、何かしら自分に返ってくるのかなと思います」

 北川選手は京都市出身。小学5年生から南京都ラグビースクールで競技を始めた。伏見工高(現京都工学院高)―関東学院大とラグビーのエリートコースを歩み、2003年トヨタ自動車に入社した。16年間在籍し、トップリーグ戦出場は通算150試合を超えた。トヨタ自動車退団後、日野から誘いを受け、「大好きなラグビー」の継続に踏み切った。

 一時、新聞やネット記事には「現役引退」と書かれた。「でも」と北川選手が説明する。

 「そもそも、僕自身は引退というコトバは使っていません。退団としか言ってなかった。だけど、“トヨタ退団イコール引退”と受け取られたのでしょう」

 日野レッドドルフィンズには前々から興味があったそうだ。関東学院大の先輩にあたる40歳のプロップ久富雄一ら尊敬する選手、魅力的な選手が集っている。チーム名から企業名を初めて外し、地域密着を打ち出した運営方針にも共感を覚えた。スーパーラグビーの強豪クルセイダーズとパートナーシップ契約を結んでいることもあり、「これからも上昇していく魅力的なチーム」に映っていた。

 もちろん年齢からくる体力の衰えはあろうが、ラインアウトのキャッチの高さや巧さ、スクラム、モールでの押し、ディフェンスでの献身的な動きは健在である。日本代表として43キャップの実績はダテではない。22日のパナソニック戦でもラインアウトでクリーンキャッチを繰り返し、相手ボールをスチールまでした。

 試合は猛反撃もむなしく、2点差でパナソニックに屈した。「負けは悔しい。勝てる試合だったんで」と顔をゆがませながらも、「フォワードとして準備してきたことは出せた。自分の出来としては、まあ、80点ぐらいでしょうか」と充実感も漂わせた。

 日野レッドドルフィンズの追加選手発表から、まだ1カ月足らず。チーム内競争も激しく、「すごく上に上がりたい意識が強いチーム」と感じている。

 「(きょうの試合)あんな悪い状況から立て直せる力はあるんです。でも、ここからは勝つ文化というか、勝ち方をしっかり知っていくことが大事でしょう。最後に2点差をひっくり返すにはどうしたらいいのか。勝負の世界、そこは重要なことだと思います」

 チームの今季の目標はトップリーグ8位以内を掲げている。「僕は普通にやったらベスト6には入るかなと。そうなるよう、プレーでチームに貢献していきたい」。

 最後に短く聞いた。「今、楽しいですか?」と。北川選手は顔をくしゃくしゃにした。

 「最高に楽しいです。日野はいいチームです、ほんと」

 ラグビーをラブし、自身の境遇に最善を尽くす人生。令和元年。繰り返すが38歳、キタさんの新たな挑戦がはじまった。