ラグビーを通し、沸き上がる感動をーRWC決勝会場でミニラグビー

表彰式を終えたヒーローズ会長、林敏之さん(撮影:筆者)

 「ひたむきさ」とはラグビーにとっての、「ピュアさ」は子どもたちにとっての美徳なのだろう。小学生によるミニラグビーの全国大会『第11回ヒーローズカップ決勝大会』を見て、つくづくそう感じた。負けて泣き、勝って泣く。大会を主催するNPO法人ヒーローズの林敏之会長は「沸き上がる感動をぜひ、体験してほしい」と言うのだった。

 全国各地の予選大会には合わせて約250チームがエントリーした。今秋のラグビーワールドカップ(RWC)の決勝会場となる横浜国際総合競技場(横浜スタジアム)でおこなわれた決勝大会には、16チーム、小学校5、6年生の約500人が参加した。気温10数度。大きな正面スタンドには子どもたちの親や応援団が詰めかけ、子どもたちが緑のハイブリッド芝の上を駆けまわった。

 「ヒーローズ!ヒーローズ!」

 「ナイス、タックル!」

 「燃えろ、燃えろ、鬼のタックル!」

 青空の広がる冬空の下、大歓声が寒風にのる。グラウンドには2つの試合ピッチ。そりゃ、前日見たスーパーラグビーのサンウルブズ戦や日本代表の試合とはスピード、パワー、体格、フィジカル、スキルは違うが、ひたむきさは同じである。

 決勝は、大阪対決となった。東大阪KINDAIクラブラグビースクールが、枚方ラグビースクールに走り勝った。東大阪の141センチのSHのパスさばきはうまかった。敗れた枚方の子どもたち、コーチ、親たちは大粒の涙をぼろぼろこぼした。

 試合は12分ハーフでおこなわれた。大会の基本ルールが2つ。1・コーチは試合中、ピッチ外からの指示禁止、2・「ワン・フォア・オール、オール・フォア・ワン精神」を遵守することーである。

 だから、試合後、必ず、アフターマッチファンクションが実施された。ノーサイド精神でもある。試合後、勝っても、負けても、お互いの健闘を讃え合う。両チームのキャプテンが相手チームに感謝の言葉を口にし、エールを交歓するのだった。勝ったチームは、相手の悔しさも背負って戦っていった。

 もう、引き分け抽選はつらかった。2日間で6試合が引き分け抽選となった。上のラウンドに進めるかどうか。悲喜こもごも。でも、これもまた、何かしらの学びとなるだろう。世の中、常に勝つものは少数である。人生、たいがいは勝ったり負けたりする。

 出場選手全員が参加した表彰式。59歳の林会長は涙声でこう子どもたちに語りかけた。

 「この日産スタジアムで大会ができたことを本当にうれしく思います。選手のみなさん、エンジョイしてくれましたか」

 子どもたちの「ハイっ」という声がひびく。林会長は、かつて強烈なタックルや突進から、「壊し屋」と異名をとった日本代表の名ロックである。純朴、かつ感性のかたまり。

 「ヒーローズカップという名前の意味は、ラグビーのヒーローだけじゃありません。やっぱりラグビーをやっている子は優しいよね。思いやりがあるよね。みんなのことが考えられるよね。そういってもらえる人になってもらいたいんです。この中から、たくさんの人生のヒーローが生まれてくることを心から祈っています」

 大会は2008年の第一回には近畿の32チームが参加した。回を重ねるごとに少しずつ参加チームが増え、今回は全国の約250チームが参加するまでになった。決勝大会は初めて関東、しかもラグビーワールドカップの決勝会場でおこなわれた。子どもたちにとっては宝物となるだろう、きっと。

 優勝した東大阪KINDAIクラブのキャプテン、小学6年生の徳山凌聖くんはこう、言った。

 「ワールドカップの舞台でプレーできたことをうれしく思います。気持ちよかった。このメンバーでできたこともサイコーでした」

 大会にはゲストとして、箕内拓郎さんや小野澤宏時さん、大西将太郎さんら元日本代表も参加した。日本代表歴代最多キャップを持つ大野均さんはまぶしそうに子どもたちを見つめながら、「みんな幸せでしょうね」と言った。

 「これからラグビーを続ける、続けないに関係なく、ワールドカップの決勝の舞台に実際、立ったという経験は将来、大きなものになるでしょう」

 まさに沸き上がる感動である。ひたむきな子どもたちのプレーを見させてもらい、こちらは心が洗われた。幾多の涙に心が震えもした。願わくは、ラグビーを通して、こころ優しき、感性豊かな社会のヒーローが育つことを。