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価値ある3位。全体のレベルアップ示した女子セブンズ。

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)
3位決定戦の香港戦で飛ぶように駆ける清水選手(撮影:長尾亜紀)

天を突く香港の摩天楼のごとく、日本の女子セブンズの志は高い。目標はリオデジャネイロ五輪金メダル。そのための底上げの役割を担う、7人制ラグビーの日本選抜が香港女子セブンズに挑み、3位と健闘した。

8日の香港フットボールクラブのラグビー場。観戦した日本ラグビー協会の本城和彦・オリンピックセブンズ部門長は漏らした。「価値ある3位だね」と。

女子日本代表『サクラセブンズ』がワールドシリーズ(WS)の米国大会(8、9日・米アトランタ)に出場しているため、日本選抜は米国遠征に外れたメンバーとユースなどの将来性ある若手で編成された。だが、代表入りや代表復帰を狙う意欲は強く、それがプレーに迫力を加えていた。

予選プールでは、ベストメンバーの地元香港に敗れたものの、3勝1敗の1位で準決勝に進んだ。これもベストメンバーの南アフリカにはパワーで押し切られたが、3位決定戦では香港に10-5で雪辱し、スタンドの地元ファンを落胆させた。

日中の気温が最高28度。香港独特の蒸し暑さの中、日本は存在感を示した。日本選抜の稲田仁ヘッドコーチ(HC)は言った。

「結果は3位となったけれども、大会を通して、成長している選手が多かった。とくに若い選手にとっては、日本を背負ってやるプレッシャーを知る、いい機会になりました。若い選手、新しい選手が、どんどん出てきています」

例えば、18歳の立山由香里(日体大)や清水麻有(日体大)は溌剌としたプレーを見せ、チームを勢いづけた。17歳の中山潮音(宮崎・宮崎北高)、フィジー出身の16歳、バティヴァカロロ・アテザ・優海(東京・都立石神井高)も非凡な才能を発揮した。

もちろん、代表経験者の福島わさな(追手門学院大)や竹内亜弥(アルカス熊谷)、末結希(アルカス熊谷)も闘志あふれるプレーでサクラセブンズ復帰をアピールした。末は汗だくの笑顔で声を張り上げた。「もっと頑張ります。オリンピックに出られるよう頑張ります」と。

戦い方は、サクラセブンズと一緒だった。ディフェンスははやく出て、はやいテンポで攻撃を継続していく。タックルがシャープで、ラックはうまかった。ただ、時折、判断ミス、サポート不足、パスミスが出て、相手に逆襲を許してしまった。フィジカル、スキル不足もあったが、チーム全体として「我慢」が足りなかった。

できれば、決勝に進み、香港スタジアムの大観衆の前でプレーしてほしかったのだが。決勝は、南アフリカがフランスを破った。稲田HCは言った。

「(女子セブンズの)全体のレベルアップは間違いなく、なされています」

上昇気流にのる女子セブンズ。リオ五輪に出場するサクラセブンズ入りをかけた争いがし烈さを増していく。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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