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早慶明、王座奪回のキーワードは。

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

強風下の14日、東京・秩父宮ラグビー場で全早慶明三大学ラグビーが開かれた。試合後はスタンドで三大学の監督によるトークショーを実施、大学4連覇の帝京大の進撃をストップして大学王座を奪回するため、監督がそれぞれ掲げた今季のキーワードは早大・後藤禎和監督が「自律」、慶大・和田康二監督は「貢献」、明大・丹羽政彦監督は「個々のレベルアップ」だった。

早大は昨季、関東大学対抗戦で4位に沈み、大学選手権では準決勝で帝京大に完敗した。とくに逆転負けが目に付いたこともあって、就任2年目の後藤監督は「かなり精神的に弱いのではないかと認識しました」と振り返る。「だから、精神的に強くなろうと言い合った。そのためには、大人にあれこれ指示されて動く集団ではなく、自分たちで何が正しいのか、適切なのか、そういう判断基準をしっかり持って、自分たちで自分たちを律して行動していく、鍛練していく、そういう集団になっていこうということです」

後藤監督も、その過程で、自身が「ぶれない」「妥協しない」と言い切る。中期的な目標としては、フィジカル強化、人材確保、コンディショニングの充実を掲げる。「ただ(サイズ、フィジカルで)一朝一夕に帝京大に追いつき、追い越すのは現実的には無理。ワセダはスピード、数で勝つ」。局面で数的優位をつくっていく戦法である。

かたや、慶大は昨季、関東大学対抗戦で5位となり、大学選手権ではベスト4に進出できなかった。和田新監督は「部員一人ひとりが部にどういう貢献ができるか、常に考えて行動してほしい。試合に出られないメンバーでも部に何らかの貢献をする。試合メンバーは80分間、常にチームに対して貢献してほしいという意味です」と説明した。

また明大は昨季、関東大学対抗戦で優勝しながらも、大学選手権ではベスト4進出を逃した。丹羽新監督は「個々が、ラグビーの技術もさることながら、選手として、しっかりラグビーに向き合ってほしい」という。明大は1923(大正12)年創部。「100周年に向け、私生活を含めて自覚をもう一度持って、ラグビーに取り組んでいこうと選手に伝えています」と明かした。

全早慶明は東日本大震災復興支援として、1試合40分の変則形式で3試合行われ、全明大が2勝、全早大は1勝1敗、全慶大は2敗だった。トークショーには『スクラム釜石』の石山次郎代表も参加。ファンの気持ちを代弁する形で、「ラグビー人気が低迷しているのは(早慶明)三大学がだらしないからじゃないのか。確かに帝京は素晴らしいチームだと思う。でも伝統校3校がだらしない、もっと輝いている姿であってほしいと思います」と奮起を促していた。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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