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東芝、打倒サントリーのカギは。

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

ラグビーのトップリーグのプレーオフ決勝戦は27日、東京・秩父宮ラグビー場で行われる。東芝がリーグ戦で1点差負けしたサントリーに雪辱できるか。フィジカル勝負、とくにスクラムとブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)に勝負をかける。

準決勝までの戦いを見ると、スクラムでは東芝が優位に立つだろう。サントリーの「超攻撃ラグビー」のリズムを崩すためには、ここで重圧をかけたい。東芝は今季、スクラム強化に努めてきた。久保知大、湯原祐希、浅原拓真のフロントローのバインディングはもちろん、持ち前の8人の結束でプッシュできるかどうか、である。

東芝のスタイルが『スタンディングラグビー』。つまりタックルされてもできるだけ倒れずに、ボールをつないで前進していく。ボールキャリアの踏ん張りと、2人目、3人目の素早いサポートが大事となる。そのためには「我慢」が必要か。

敵陣のゴール前でラインアウトをとれるかどうか。東芝にとっては、そこからのドライビングモールが勝負どころとなる。

それぞれ得意の攻撃スタイルを持つチーム同士の戦いだから、当然、どちらが長くボールを保持できるかが勝敗を左右する。その意味ではリサイクルのリズムがポイントとなる。接点、ブレイクダウンの攻防で優位に立てるかどうか、である。

サントリーは簡単にいえば、「アタッキングシェープとブレイクダウンのセット」で連続攻撃を仕掛けてくる。アタッキングシェープとはいわば攻撃のカタチ。攻撃のオプションを増やすことで相手ディフェンスをばらし、1対1の局面をつくり、倒されても2人目がズバッとポイントを乗り越えていく。

だから、東芝としては1人目の激しさは当然として、2人目が前にでられるかどうかが重要となる。しかも精度、スピード、ボディーポジションがよくなければならない。攻撃も同様だ。昨年12月の対戦では、FWの頭が下がってサントリーのプレッシャーを受けた。こんどは「フェースアップ」(顔を上げること)でボールをキープしたい。

カギとなる選手は、サントリーがジョージ・スミス、東芝はスティーブン・ベイツの両フランカーだろう。ここで世界レベルの攻防を見ることができる。さらにいえば、地味ながらも、久保、湯原、浅原のフロンロー陣の堅実なサポートプレーにも注目してほしい。

東芝の和田賢一監督は不敵な笑みを浮かべる。「フィジカルの勝負をしたい。うちのスタイルはからだを相手にあてていくフィジカルなラグビーですから。いかに立って、ボールを動かせるか、です」と。

接点勝負は、ボクシングでいえば、ミドル級のパンチの応酬のようなスピード感と迫力となるだろう。ブレイクダウンでのレフリーの笛、反則も勝敗を左右することになる。どちらが最後まで「規律」を保てるか、だ。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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