LGBT法連合会が22日、自民党総裁選の候補者に実施したアンケート結果を公表。野田聖子候補、高市早苗候補、河野太郎候補の三名が回答した。

野田氏は、性的マイノリティに関する差別禁止法を「制定するつもり」とし、今年5月に与野党で合意したLGBT法案にも「賛成」とした一方、高市氏は差別禁止法を制定するつもりはなく、LGBT法案についても「差別の定義が曖昧で反対」と賛否が分かれ、河野氏はいずれも「その他」と答えるなど及び腰な姿勢が目立った。

岸田文雄候補からの回答はなかった。

両極端な回答

野田氏、高市氏、河野氏の主な回答は以下。

LGBT法連合会自民党総裁選候補者アンケートより筆者作成
LGBT法連合会自民党総裁選候補者アンケートより筆者作成

差別をなくすつもりはない

今年5月、国会に提出されるはずだった「LGBT理解増進法案」。そもそもこの法案は自民党LGBT特命委員会が提案したものだが、自民党内の一部議員による強硬な反対によって見送りとなった。

当初からこの法案は、性的指向や性自認に関する差別的取扱いを禁止することもなく、あくまでも「理解」を広げる"努力"を求めるという骨抜きの内容だった。

しかし、与野党の実務者協議を経て、基本理念や目的に「差別は許されないものであるとの認識の下」理解増進の施策を進めるという文言が追記された。本来求めている実効性のある内容とは程遠いが、苦汁を飲んで野党もこれに合意した。

それにもかかわらず、この「差別は許されない」という文言に対し、自民党の一部議員が反発。自民党の最終決定機関である「総務会」は全会一致(全員賛成)が原則ということもあり、最終的に法案提出が見送られてしまった。その際、この法案を通さないよう党執行部に圧力をかけたのが、安倍晋三氏だと報じられている。

そんな安倍氏の強い推薦を受けているのが高市氏だ。

アンケートに対する高市氏の回答を見ると、日本社会において性的マイノリティに関する「差別は存在すると考えている」とする一方で、前述の与野党で合意したLGBT法案については「反対」と回答した。「差別の定義が曖昧」だからだという。河野氏も差別禁止法を制定するつもりがあるかという質問への回答で「差別の定義」について言及している。

この「差別の定義が曖昧」というフレーズは、差別をなくしたくない人たちの常套句だ。そもそも差別とは、「不合理に区別する」ことをいうが、何が差別に当たるのか、その線引きは絶対的なものではなく、事案ごとにその「合理性」が絶えず検討される。

差別の定義が曖昧だから、法律に「差別は許されない」と書けないのであれば、そもそも憲法14条で差別の禁止が明記されている点はどう捉えるのだろうか。

憲法で差別が禁止されているにもかかわらず、社会にはさまざまな差別が根強く残っている。だからこそ、障害者差別解消法や男女雇用機会均等法をはじめ、それぞれの法律で具体的な実効性のある「差別的取扱いの禁止」が明記されてきた。定義が曖昧だから「差別は許されない」と書けないというのは詭弁だ。

さらに言うと、今回与野党で合意に至った「LGBT理解増進法案」は、あくまでも理解増進の前提として「差別は許されない」という認識を示しているにすぎなかった。この文言自体が法的な効力を持つものではない。にもかかわらず「反対」というのは、そもそも「差別はダメだ」という認識すら示したくないということなのだろうか。

同性婚についての考え

なぜここまで「差別」という言葉を明記したくないのか。

大きな理由の一つとして「同性婚容認へと繋げたくない」という点があげられるだろう。異性カップルは法的に結婚することができて、同性カップルは結婚ができない。これは、まさに国が「差別的な取り扱い」をしている状態だと言える。

筆者は性的マイノリティが子どもを持つことについて取材した本を上梓した。子どもを持つ当事者も増えている中で、例えば同性カップル「二人」の関係のみならず、「子ども」との関係が法的に保障されないことによって、さまざまな不利益が生じてしまっている。この実態に目を向け、早急な法整備が求められている。

しかし、昨年8月、当時総務大臣だった高市氏は、国勢調査で同性カップルが「配偶者」を選択すると「他の親族」に変えられカウントされない件について、「わが国の婚姻関係は異性間に限定されており、区別する必要がある」と同性カップルを集計すらしない考えを示した。

さらに高市氏は、今月10日に毎日放送の番組に出演した際、同性婚について「今の憲法ではできません。『両性の合意によって』となっておりますので」と発言した。

河野氏は16日、メディアに対し同性婚の法制化に「賛成」と発言している。その一方で「憲法上の問題をどうするのかというところは当然ある」とも述べた。

憲法24条に「両性の合意」と書かれていることから、憲法は同性婚を禁止しているという誤解が未だに根強いが、あくまでも憲法は同性婚を想定しておらず、禁止はしていない。これは政府答弁でも示されている。つまり、民法を変えることで同性婚は法制化することができるのだ。

高市氏は、前述の毎日放送の番組で、同性婚が「今の憲法ではできない」と触れた直後に、「法的な制約がありますよね。でもだからこそ憲法を変えなきゃいけません。例えばサイバー攻撃など」と同性婚を法制化する気はないが、この議論をだしにして強引に改憲議論に持っていった。

岸田文雄氏も、17日にテレビ朝日の番組で同性婚について問われたが、岸田氏は「現状認めるまではいたっていない」「多様性を認めるということで議論はあってもいい」と答えている

「”認める”まではいたっていない」「議論は”あっていい”」という物言いからは、自らはマイノリティの権利を認める・議論を許可する立場にあるという傲慢さ、異性愛中心主義の考えがにじみ出ていると言えるだろう。

岸田氏は「認めるにいたっていない」というが、2019年に実施された性的マイノリティに関する全国意識調査では、同性婚に賛成する人が6割以上にのぼり、20〜30代では8割を占めている。他の複数の調査でも過半数が同性婚の法制化に賛成しており、「認めるに至っていない」のは、あくまでも岸田氏の周囲であるという点は指摘したい。

たとえ個人では賛成でも、党内をまとめることができるのか

LGBT法連合会によると、各党党首選のアンケートは2018年から実施しているが、自民党総裁選の候補者から回答があったのは初めてだという。これは、性的マイノリティをめぐるイシューが「論点」となっていることを示しているだろう。

アンケートを見る限り、性的マイノリティの権利保障に前向きな野田氏と、一方で差別をなくしたくないがために、強い意思をもって差別禁止や同性婚に反対し、理解増進という骨抜きかつ、むしろ差別を助長する恐れすらある法案を通そうとする高市氏、そして、同性婚には威勢よく「賛成」としつつも、仮に総裁に就任した場合にすぐに対応が求められるLGBT法案については及び腰な河野氏と、それぞれの態度が鮮明になった。

岸田氏に至っては、そもそも過去に性的マイノリティに関する発言はほとんどしてこなかった。意見を示した他の三名に比べ、両者の性的マイノリティをめぐる課題への関心は低いと考えざるを得ない。

同様の課題で、例えば選択的夫婦別姓についても自民党内で賛否は対立している。かつて菅首相も選択的夫婦別姓を推進する立場だったが、結局党内をまとめるということはなかった。賛否の分かれる問題はいつも議論が進まない。

性的マイノリティをめぐる制度についても同じく、仮に河野氏や野田氏が総裁になったとしても、これだけ考えが分かれている中、実際に党内をまとめることができるかは疑問が残る。

2015年頃から議論され、ようやく提出されるかと思われたLGBT法案も、自民党内の賛成派議員は多数と言われるが、一部の反対派によって阻まれた実態がある。

具体的にどのように党内をまとめていくかが見えない限り、性的マイノリティをめぐる前向きな候補者個人の考えも、またはその候補が総裁になったとしても、「実現可能性」については割り引いて考えざるを得ないだろう。