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藤井聡太竜王(20)初防衛まであと1勝! 竜王戦七番勝負第4局、広瀬章人挑戦者(35)に完勝

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月8日・9日。京都府福知山市・福知山城天守閣において第35期竜王戦七番勝負第4局▲藤井聡太竜王(20歳)-△広瀬章人挑戦者(35歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 8日9時に始まった対局は9日15時21分に終局。結果は95手で藤井竜王の勝ちとなりました。

 藤井竜王はこれで3勝1敗。初防衛、2連覇まであと1勝としました。

 第5局は11月25日・26日。福岡県福津市・宮地嶽神社貴賓室でおこなわれます。

 藤井竜王の今年度成績は23勝6敗(勝率0.793)となりました。

広瀬挑戦者、工夫の序盤作戦

 藤井竜王先手で戦型は角換わり。広瀬挑戦者は第2局、後手番を持って変化球的な3三金型をぶつけてきました。本局ではオーソドックスな3三銀型。ただしその先、少し前によく指された6三金型を採用しました。

広瀬「実戦例の比較的少ない形に誘導したんですけど」「流行形からはちょっとはずれてると思うので。なんていうか、以前はかなり研究した形でもあったので。久しぶりにまたやってみようかなと思いました」

 40手目。広瀬挑戦者は6筋の歩を突っかけて動きます。対して藤井竜王も桂を跳ねて反発。前例通り、戦いが起こりました。藤井竜王は桂を取られる代償に広瀬陣に角を打ち込んで馬を作り、香を取ります。

藤井「こちらから仕掛けていって、馬を作る形になったんですけど。ただ、そうですね。なかなかその馬が、はたらかせるのが難しい形なので。方針の常に難しい将棋なのかなと思っていました」

 55手目。藤井竜王は3筋の歩を突っかけ、前例からはずれました。

広瀬「▲3五歩とされてからちょっと手さぐりといいますか。まあ、ちゃんと指せればいい勝負が続くかな、とは思っていたんですけど」

 藤井竜王は取った香をどこに使うか。前例では攻防に利く6筋に打たれています。本譜、藤井竜王は攻め重視で香を2筋に据えました。

藤井「たしか▲6九香と打った将棋なども、前例ではあったと思うんですけど。一応本譜、香を手持ちで、どこかで攻めに使っていければというふうに思っていました」「ただ▲2七香だと、ちょっとなんというか、一点狙いという感じなので。うまくいくかどうか、微妙かなと思っていました」

 60手目。広瀬八段は金取りに桂を打ちます。藤井竜王の攻撃陣をけん制した一手。しかしこのあたりから少しずつ、藤井竜王がペースを握っていったようです。

 65手目。藤井竜王は香を走って攻めます。ここで1日目は指し掛け。広瀬挑戦者が66手目を封じました。

広瀬「なんか封じ手のあたりは、ちょっともうすでに指しにくくしてしまったかもしれないな、と思っていまして」

藤井竜王、パーフェクトに近い勝利

 明けて2日目。広瀬挑戦者は歩を打って相手の飛車の利きを止めます。

広瀬「まあ△2八歩はしょうがないかなと思ったんですけど。その手前の(62手目)△8六歩突いたあたりがちょっと、考えどころだったかもしれないですね。△2八歩を打たされた形が思ったよりひどかったので。ちょっとその手前ぐらいでは、なんか違う指し方をするべきだったような気がします」「2日目は苦しい時間が続いてました」

 73手目。広瀬挑戦者は1時間12分の長考で5筋の飛車を下段に引き、馬取りに当てました。

広瀬「ちょっと収拾困難な気が自分の中ではしていて。バランスを保つ手があったかもしれないですけど、まあちょっと自分の力ではわからなかった。発見できなかったです」

 藤井竜王はじっと馬を逃げて、指す手に困りません。形勢は次第にはっきりと、藤井優勢へと推移していきます。

 77手目、藤井竜王は攻めの香の利きをいかして、桂取りに歩を打ちます。広瀬玉のすぐそばを攻めていて、これが厳しい。

藤井「▲2二歩と打ったあたりで、けっこうそうですね、▲2一歩成からの攻めが速いので、少し指せるのかな、と思いました」

 藤井竜王は勝勢に立ってからの指し回しも正確そのもの。95手目、角を打って王手をかけられたところで、広瀬挑戦者は投了。15時21分と、竜王戦にしては比較的早い時間での終局となりました。

藤井竜王、2連覇まであと1勝

 完璧に近い内容で第4局で快勝を収めた藤井竜王。第5局に勝てば竜王位初防衛が決まります。

藤井「第5局までに2週間ほどあるので。その間(かん)にしっかり準備して、また状態を整えて臨みたいと思います」

 おそろしいことに、藤井竜王は過去、タイトル戦七番勝負で2敗目を喫したことがありません。

 藤井竜王は七番勝負で第6局を指したことがありません。今期はどうなるでしょうか。

 一方、広瀬挑戦者はカド番に追い込まれました。

広瀬「もうあとがない状況になりましたけど。まあなんとか、シリーズが続くように、第5局、がんばりたいと思います」

 藤井竜王と広瀬挑戦者の通算対戦成績は藤井8勝、広瀬2勝となりました。

 両者は竜王戦第5局の前に、11月14日、A級順位戦でも対戦します。こちらもまた、注目の一番です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『あなたに指さる将棋の言葉』(セブン&アイ出版)など。

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