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「力が及ばなかった」「また気持ちを新たに頑張っていけたら」里見香奈女流五冠、記者会見コメント

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

――今回の棋士編入試験を振り返って。

2か月ちょっとですかね、の戦いだったんですけれども。大きな舞台で対局させていただくことは、大変貴重な経験にもなりました。ただ、やはり実力が及ばなかった、っていうところだと思います。

――3連敗という結果について。

それなりに対策を練ってというところではあったんですけれども。少し、なんていうか、自分の指してる将棋より、より新しい指し方だったわけなんですが。うまくいってる将棋もあれば、そうでない将棋もあって。ただ、そういう中終盤のねじり合いで、読み負けてる部分があったので。そうですね、まあ実力不足。弱い、といったところに他ならないんですけれども。ただこういう大きな舞台での敗戦、することによって、また自分自身も成長できると思っておりますので。今後の糧にしたいと思っております。

――今後も棋士という立場を目指す考えは?

私自身本当に、最後の挑戦といったところでしたので。多分今後考えることはないのかなと思うんですけれども。ただ、今回は特別、星が片寄っていい成績をとれたっていうところだと思いますので。そうですね、これから力をつけて、自分の力でこう、勝っていきたいなっていう気持ちはあります。

――第1局はデビュー以来勝率9割を超え絶好調の徳田拳士四段。やりにくさはあった?

やりづらさはあまりなく。自分としては勝率の高い棋士と対局ができるっていうところで、より気合が入っていたというところはあります。ただ、そうですね。対局はずっと互角の展開が続いてたんですけど。こちらから先に崩れてしまったので。その辺りの自分の実力の弱いところっていうのが見えてきて。そうですね。悔しい気持ちはあるんですけれども、同時に、自分の実力を受け入れて次に進む一局になると思うので。これからの糧にしていきたいと思ってます。

――並行して女流タイトル戦の清麗戦、白玲戦、女流王将戦などがあり、ハードスケジュールを心配をするファンもいた。日程の点については。

確かに対局が多いのは間違いないのかなと思うんですけれども。ただ、そうですね。どういう状況でも変わらず普段の力を発揮できないと、なんていうか、本当の強さじゃないのかなというふうに思ってます。

――棋士編入試験は制度的に何度でもチャレンジできる。今後受験資格を満たした際に再挑戦の可能性は?

いまのところはないです。

――棋士編入試験中、家族や地元の人から励ましの言葉はあった?

そうですね・・・。あまりなかった気はします(笑)。たぶん気を遣ってくださって。家族も気を遣ってくれてたのか。いつも通り、体調を気遣うところだけで。特に、そうですね、この編入試験においてはあまり特別なかったような気がします(笑)。はい。

――普段の対局と違うプレッシャーはあった?

注目していただけることで「すごくありがたいな」っていう気持ちはあったんですけれども。特別そうですね。緊張したりっていうことはなくて。ただ、大きな勝負ですので。対局を迎えるにあたって、ほどよい緊張感というのはありました。

――ほかの女流棋士のはげみになったのではないか。これから挑戦する女流棋士にアドバイスやエールは?

そういう方々が増えれば、より嬉しいかなという気持ちはあります。ただ、自分の現状の力といたしましては、力が及ばなかった、ということなので。また、そうですね、気持ちを新たに頑張っていけたらと思っています。

(里見女流五冠の言葉はできるだけ正確に、記者からの質問は簡略に記した)

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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