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藤井聡太三冠(19)粘りを振り切って木村一基九段(48)を降し今期順位戦4勝1敗&通算43勝2敗

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 9月20日。東京・将棋会館において第80期順位戦B級1組5回戦▲藤井聡太三冠(19歳)-△木村一基九段(48歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった大局は23時28分に終局。結果は87手で藤井三冠の勝ちとなりました。今期B1の成績は、藤井三冠4勝1敗、木村九段1勝3敗となりました。

 藤井三冠の順位戦通算成績は43勝2敗(勝率0.956)となりました。現代将棋史上空前の、すさまじい勝ち方です。

 藤井三冠の今年度成績は27勝6敗(勝率0.818)となりました。

藤井三冠、鮮やかな開き王手で決める

 藤井三冠リードから、木村九段が粘って迎えた難解な終盤戦。藤井三冠にとってはいやな流れにも見えました。

 解説の飯塚祐紀七段は次のように語っていました。

飯塚「局面はだんだん混迷を深めてきたですね。だいぶ藤井さんいいのかな、と思ったんですけど、この時間でこの形勢なら全然、差なんてあってないようなもので。ここからが棋士としての真価が問われますよね」

 深夜の順位戦では、数限りないほどのドラマが生まれました。

 本局、藤井三冠は乱れません。下段の龍の利きを活かしながら、上部から金を打ち、木村玉を追いつめていきます。

 気迫のこもった受けを続ける木村九段。相手が一手間違えれば、あっという間に逆転します。

 79手目、藤井三冠は相手の歩頭に金を寄りました。これが香の利きを通す、鮮やかな開き王手。次の一手問題に使われそうな、あまりに鮮やかな決め手でした。

 史上最年少三冠につながった先日の叡王戦第5局。そして本局と、藤井三冠の金の動きが絶品で、いずれも相手玉に迫る大活躍を見せました。

 87手目。藤井三冠は取った角を中段に打ちます。これが龍と成銀の両取り。木村九段は11分考えて次の手を指さず、投了を告げました。

木村「最後、折れた感じになっちゃって・・・」

 感想戦のため駒を並べ直すとき、木村九段はそうぽつりと口にしました。

 両者の通算対戦成績はこれで藤井三冠7勝、木村九段1勝となりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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