9月15日9時。愛知県蒲郡市「西浦温泉 旬景浪漫 銀波荘」において第69期王座戦五番勝負第2局▲木村一基九段(48歳)-△永瀬拓矢王座(29歳)戦がおこなわれます。棋譜は公式ページをご覧ください。

 本局がおこなわれる銀波荘は、将棋史上に残る数々の名勝負が戦われてきた対局場です。

 中でも有名な一局は1979年名人戦七番勝負第4局▲中原誠名人-△米長邦雄挑戦者戦でしょう。中原名人が指した歴史的妙手▲5七銀について、当時の観戦記には次のように記されています。

 取られてしまう銀を、わざわざ一手かけて、相手に取らせる。相手は、銀得になる。ところが、そのために、中原の王は詰まないのだ。

 いみじくも板谷進八段は言った。「5七銀みたいな手はプロでも普通では発見できない。生命がけで指している対局者だけが、ついに発見できる妙着だろう」

 私もそう思う。おそらくこの一手は、受けにおける妙手として、長く将棋の歴史に残るに違いない。

(斎藤栄・観戦記)

 その対局で副立会人を務めていた板谷進八段(1940-88、没後追贈九段)は地元愛知県出身。藤井聡太新三冠から見れば大師匠(師匠の師匠)にあたります。

 ちなみに永瀬王座から見れば、師匠・安恵照剛八段の弟弟子が中原16世名人(高柳敏夫名誉九段門下)。木村九段から見れば米長永世棋聖は兄弟子(佐瀬勇次名誉九段門下)です。

 8時43分頃。まず対局室に永瀬王座が姿を見せ、床の間を背にして、上座に着きました。永瀬王座は今期王座戦もスーツ姿で戦います。

 永瀬王座は前日、前局第1局について次のように語っています。

永瀬「反省点はいろいろ見つかったのかな、と思います。(敗因は?)いろいろあるところではあるのかな、と思います。ペースの時間は長かったんですけど、とても難しい将棋だったかなと思います。内容としてはわるくなかったかと思いますので、引き続きいい内容の将棋を指せればと思っております」

 8時45分頃、木村九段が登場。和服姿です。

 木村九段は第1局について次のように語っています。

木村「不利になりましたので、反省点の方が多いといったところです。結果は幸いしましたけど、実質は負けだと思いますので、あまり浮かれているような状況ではありません。△9九角という珍しい派手な一着が決まったのがよかったんですけど、そうそうそういうことは続くことでもないので。次はそういうことは期待できませんから。研究にはまるとか、そういったことで差をつけられないようにしたいと思います」

 第1局の△9九角は観戦者もなかなか気づかないような名手でした。もし木村九段がこのシリーズを制することになれば、王座のタイトルを呼び寄せた一手として、長く語り継がれることになるでしょう。

 本局の立会人を務めているのは福崎文吾九段。1991年の王座戦五番勝負で谷川浩司王座(当時)に挑戦し、3勝2敗1千日手という成績をあげ、王座1期を獲得しています。翌92年は羽生善治挑戦者に0勝3敗でタイトルを譲り渡しました。以後、羽生王座は19連覇、通算24期という恐るべき実績を残しています。

 定刻9時。福崎九段が対局開始の声をかけました。

「定刻になりました。第69期将棋王座戦第2局は、挑戦者・木村九段の先手番で始めてください」

 両対局者は一礼。持ち時間各5時間(チェスクロック方式)の対局が始まりました。

木村「先手番ということもありますので、積極的にいきたいと思います」

 前日そう語っていた木村九段。戦型は相掛かりを選択しました。

 29手目。木村九段は端1筋の歩を突いて仕掛けていきます。永瀬王座はどのように受けていくのか。形勢はほぼ互角のようです。

 11時現在、永瀬王座は34手目を考えています。

 本局の記録係を務めているのは、地元愛知県出身の柵木寛太(ませぎ・かんた)三段(増田裕司六段門下)。今期(2021年度前期)三段リーグでは13勝5敗という好成績をあげたものの、わずか順位1枚の差で、惜しくも次点に終わっています。

 柵木三段は名古屋能楽堂でおこなわれた今年度王位戦七番勝負第1局▲藤井聡太王位-△豊島将之挑戦者戦でも記録係を務めています。