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「常に最後のチャンスのつもりで臨んでます」王座挑戦を決めた木村一基九段(48)記者会見コメント全文

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

木村一基九段「(いまの気持ちは?)うれしく思っています。ただ、まあ、相手(永瀬拓矢王座)も非常に強い方ですので、キツい戦いになるかな、ということも感じています。(勉強法を変えた?)時間は増えましたんでね。ただパソコン見てるだけです(笑)。取り組む時間というのは増やさざるを得ないところがあって。そういう点では、年々、日々キツくなっているような気がします。(それが結果につながった?)そうですね。ただ、たまたま勝ったという感じもしないでもないです。王座戦は本戦入ったのも久しぶりのことです。たぶん王位の枠で本戦シードだと思うんですけど、それで入れて、こういった形で出れたのは、私にとってもツイてるかな、というふうに思います。(佐藤九段は終局後のコメントで『歳はかなりいってますけど、強くなれるとは思っている』と言っていた)正直言って、現状を維持するのでせいいっぱいですので、ああいうふうに言えるのは、やっぱりうらやましいなというところもあります。ただ歳上の先輩がああいうふうに言ってるということは、あんまりこちらもだらしないことは言ってられませんので。まあがんばっていきたいと思います。(昨年の王位戦七番勝負で敗れた際『一から出直します』という発言があったが)公式戦はけっこう続きますので、その一局一局、せいいっぱい臨んではいました。ただまあ結果が、王位リーグとかも陥落しましたしね。思わしくないときもありましたので。そういう中で、王座戦だけは順調に、順調にというか、運良く勝つことができてました。星が片寄ったような感じがします。いい意味で、ですけどね。(永瀬王座との対戦成績は3勝3敗2千日手、五番勝負の意気込みは?)あんまりやってないですよね。そういう意味では・・・これほど局数少ない人とやるのはまあ、昨年の藤井聡太さんもそうでしたけど、少ないのはちょっと気になるところではありますね。謎の相手といった感じのところがあります。ただ、あれだけ勝ってますし、ほんとにこう、将棋指すのに熱心だなというふうに感じる方ですので、熱意だけでも負けないように、とは思いますね。(一年でタイトル戦に戻ってきたことについて)王位戦で4連敗した実力からすれば、よく挑戦できたな、という感じもします。王位を取ったことは事実なんですけど。そのあと、王位を取った一年というのはA級からも落ちましたし、成績はよくありませんでしたので。他の方がすべて(タイトルを)1つ持ってる人が2つ目とか、そういうことを狙っている中では、私はそういうことにからめませんでしたので。実力が劣っていると思っておりました。まあ実際、その星のまま取られてしまいましたので。なんで挑戦できたか、ちょっとよくわからないところですけど。まあ、運がよかった。この一言に尽きます。(最後のチャンスと言っていたが)もうそんなに(チャンスは)ないとは思ってやってますので。常に最後だと思ってます。その割にはいい方に結果が向いてますので、まあその点は、ウソをついてるわけじゃないんですけど(笑)。私は常に最後のチャンスのつもりで臨んでます。(王位獲得時と比べて将棋に取り組む時間は)少し増えてるような気がします。結局、覚えることが多くて。忘れることも多いので。繰り返しやっていくという意味では、時間をかけてやるしかないですね。そういう点では、キツくなってます。(多くのファンの声援を受けて戦うことについて)声援をいただくのは大変ありがたいことです。実際、力にもなっています。ただその、番勝負を指すにあたって、やっぱり自分自身が強くなってですね、いちばんいい状態で臨まないと勝てる相手でもありませんので、そこらへんは意識しながら、せいいっぱい準備もして臨みたいと思います。(最終盤、どんな心境だった?)最後(相手玉は)詰んでたようなんですけど、私は読み切れてなかったんで。その中でどう勝ちにもっていくか。ちょっと正直、よくわからない状況でした。ミスをするとやっぱり、逆転するなという緊張感はありましたんで。安心して勝っているというような、そんな余裕はまったくありませんでした。いまは評価値とかそういったものも出ますので。私も観るときはそうなんですけど、やっぱり指すときは違うもんですね。最後まで、勝ちかどうかもよくわからなかったです。(最後、時間を使って考えていた)詰みそうで詰まなかったんで、それがなんでだろう、というのは思ってましたけど、そういったことでは、手のことばっかり考えてましたね。詰みは見つけられてない状況でしたので、詰まさない順だったらどうやって勝ちがあるかとか、そういろいろ考えてると、あっという間に時間が経ってしまいました。最後は持ち時間が残ってて、ありがたかったです。(感想戦で)佐藤さんが詰んでるって。どうやって詰むか教えてくれなかったんですけど(笑)。さっき野月さん(浩貴八段)に聞きましたんで、ようやくわかりました。本当は詰まさなくちゃいけないですけど。反省点ですかね。(ABEMAトーナメントで若い棋士と指すことは刺激になった?)早指しと、今日は持ち時間長いので、違うことは違うんですけど。ああいった、ABEMAのトーナメントの注目されるところで若い人を相手にしてもがんばれているのは、やっぱり私としても大きいことですね。引き続きがんばっていきたいと思います。(観戦者に一言)充実している方で厳しい番勝負になると思いますけど、自分なりにせいいっぱい指したいと思います。どうもありがとうございます」

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『あなたに指さる将棋の言葉』(セブン&アイ出版)など。

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