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百折不撓・木村一基九段(48)王座戦挑戦者決定戦に進出! 石井健太郎六段(29)ついに快進撃ストップ

松本博文将棋ライター

 7月8日。東京・将棋会館において第69期王座戦準決勝▲木村一基九段(48歳)-△石井健太郎六段(29歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は20時31分に終局。結果は87手で木村九段の勝ちとなりました。

 木村九段はこれで挑戦者決定戦に進出。佐藤康光九段(51歳)と戦い、永瀬拓矢王座(28歳)への挑戦権を争います。

 快進撃を続けた石井六段は、残念ながらここで敗退となりました。

木村九段、快勝で13年ぶり王座戦挑決進出

 木村九段は今期、本戦から登場。1回戦で澤田真吾七段、2回戦で高崎一生七段に勝ちました。

 石井六段は一次予選4勝、二次予選2勝で本戦進出。1回戦では稲葉陽八段、2回戦では偉大なる兄弟子の渡辺明名人に勝利。ベスト4まで8連勝で勝ち上がってきました。

 本局は振り駒の結果、木村九段が先手。戦型は相掛かりとなりました。

 20手目。石井六段は端に△1三桂(1図)と跳ねます。

 過去に類例はあるものの、かなり珍しい構想といえそうです。木村九段は▲2六銀と上がり、石井六段が大きく動くのを警戒しながら、慎重に指し進めました。

 進んで石井陣はひねり飛車のような形になりました。木村九段は石井六段の金が中段に出てきたのを見て、飛車を転換(2図)。

 2図では木村九段がリードを奪っています。木村九段の飛車が石井陣にまでよく通り、3図の局面では勝勢となりました。

 3図からは▲7三銀成△同桂▲8二銀△同玉▲6一飛成。銀捨てから木村九段がきれいに決めました。石井六段もこうなっては受けがなく、以下はほどなく、木村九段が勝利を収めています。

 木村九段は2008年以来の王座戦挑決進出。そのときは谷川浩司九段に勝ち、五番勝負へと進みました。

 今期、木村九段が挑決で戦うのは佐藤康光九段です。

 佐藤九段は3回、木村九段は1回、王座戦五番勝負に登場。相手はいずれも羽生善治王座(当時)で、すべて3勝0敗で挑戦を退けられています。

 平成の将棋界においてずっと桁外れの存在だった羽生九段。特に王座戦の強さは圧巻で、現在までに19連覇&5連覇で通算24期という途方もない記録を作っています。

 時を経て令和の現在。五番勝負で待ち受けるのは現棋界「4強」の一角である永瀬拓矢王座です。

 4強が大舞台でぶつかり合う現在。佐藤康光九段、木村一基九段、どちらも実績十分の名棋士ですが、どちらが永瀬王座に挑戦しても、新鮮な組み合わせに映ります。ファンから熱い注目を集める五番勝負となるのは、間違いありません。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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