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豊島将之挑戦者(31)封じ手で横歩を取る 藤井聡太王位(18)すぐに応じて激しい戦いに 王位戦第1局

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月30日9時。愛知県名古屋市・名古屋能楽堂においてお~いお茶杯王位戦第62期王位戦七番勝負第1局▲藤井聡太王位(18歳)-△豊島将之竜王(31歳)戦、2日目の対局が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 朝8時50分頃、まず藤井王位が入室。和服にもだいぶ慣れた様子でスマートに袴をさばき、上座に着きます。信玄袋からはまず扇子を取り出して、畳の上に置きました。そして「お~いお茶」のペットボトルの栓を開け、グラスに注ぎます。

 続いて52分、豊島挑戦者が入室。信玄袋から懐中時計を取り出して畳の上に置き、くるくると鎖を巻きました。

 藤井王位は駒を盤上にあけ、上位者が持つ駒「王将」を所定の位置に据えました。豊島挑戦者は「玉将」を持ち、以下は両者ともに大橋流で駒を並べていきます。

 本局の立会人は青野照市九段。記録係は柵木寛太三段です。

青野「それでは1日目の指し手を並べてください」

柵木「先手、藤井先生▲2六歩。後手、豊島先生△8四歩。・・・」

 柵木三段の棋譜読み上げに従って、対局者は前日の指し手を再現していきます。戦型は相掛かりに進みました。

柵木「先手、▲8七歩」

 柵木三段が47手目まで読み上げ、藤井王位が飛車取りに歩を打ちます。1日目はここまで進みます。

青野「封じ手を開封します」

 青野九段が2通の封筒にはさみを入れ、封じ手用紙を取り出しました。

青野「封じ手は△7六飛車です」

 48手目。豊島挑戦者は8筋の飛車を一路となり、7筋にスライドさせ、歩を取りました。

青野「それでは再開してください」

 両者は一礼。2日目の対局が始まりました。

 藤井王位はまずグラスを手にし「お~いお茶」を飲みます。そして端1筋の歩を成りました。

 関係者が退出したあと、豊島挑戦者はすぐにと金(成歩)を払います。

 藤井王位は1筋で香を取ります。対して豊島挑戦者は9筋で香を取り返せる形。昨日から何度も検討さてきた順です。形勢は少しだけ豊島挑戦者がリードしていると見られていますが、勝負はもちろん、まだまだこれからです。互いに薄い玉形で、一気に終盤に入る可能性もありそうです。

 今年度の成績は藤井王位は10勝2敗。豊島挑戦者は5勝2敗です。

 豊島挑戦者はここ最近、やや対局数が少なめでした。しかしこのあとは王位戦七番勝負とともに、叡王戦五番勝負も始まります。そちらは立場を変えて、豊島叡王がタイトル保持者で、藤井王位が挑戦者です。

 ハードスケジュールが続く藤井王位。棋聖戦五番勝負では藤井棋聖が渡辺明名人の挑戦を受けています。もし第5局にまでもつれこめば、棋聖戦、王位戦、叡王戦の3タイトル戦が重なり同時に進行する「トリプルタイトル戦」の状態となります。

 過去には中原誠16世名人が1977年度、78年度に「トリプルタイトル戦」(十段戦七番勝負、後期棋聖戦五番勝負、王将戦七番勝負)を記録しています。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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