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いよいよ三冠チャレンジが見えてきた? 藤井聡太二冠(18)堂々の歩みで叡王戦挑戦者決定戦に進出

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月22日10時。東京・シャトーアメーバにおいて第6期叡王戦本戦トーナメント準決勝・藤井聡太二冠(18歳)-丸山忠久九段(50歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は16時7分に終局。結果は87手で藤井二冠の勝ちとなりました。

 藤井二冠は6月26日におこなわれる挑戦者決定戦に進出。斎藤慎太郎八段(28歳)と対戦します。豊島将之叡王(31歳)への挑戦権を得るのは、はたしてどちらでしょうか。

 藤井二冠の今年度成績は9勝2敗となりました。

藤井二冠、堂々の完勝

 後手の丸山九段は得意の一手損角換わりを採用しました。対して藤井二冠は早繰り銀から動いていきます。

 昼食休憩後の49手目。藤井二冠は歩を突き捨てて攻めていきます。藤井二冠が桂取りに歩を打ったのに対して、丸山九段は桂を逃げました。藤井二冠は丸山玉のすぐそば、2一の地点にと金を作り、次第にペースをにぎっていきました。

 コンピュータ将棋ソフトが示す評価値の上では、藤井二冠よし。しかしほとんどの人間の観戦者の目には、丸山玉はそう簡単に寄りそうには見えなかったと思われます。

 まだ難しいのではないか。そう思われたところから、藤井二冠は着実にリードを広げていきました。

 藤井二冠のと金はいったん1一(盤上右上)の香を取ったあと、左側に逃げていく丸山玉を追いかけ、と金を中央に寄せていきます。このと金が4一にまで進み、最後は丸山玉の死命を制することになりました。

 丸山九段も藤井玉に迫り、一手を争う終盤戦となります。しかし藤井二冠は正確な速度計算のもと、正確に寄せていきました。

 87手目、藤井二冠は香を打ちます。1筋で得た香を逆サイド8筋で使ってとどめを刺す、完璧なストーリーでした。これで丸山玉は受けても一手一手。対して、藤井玉に詰みはありません。丸山九段が投了し、対局が終了しました。

 藤井二冠は強敵を降して大きな勝利。丸山九段との対戦成績を1勝1敗としました。これで藤井二冠が負け越している棋士は1人減り、9人から8人になりました。

 藤井二冠は堂々たる歩みで叡王戦挑戦者決定戦に進出。斎藤八段と藤井二冠の過去の対戦成績は、斎藤2勝、藤井3勝です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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