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藤井聡太棋聖(18)先手番で相掛かりを採用 渡辺明挑戦者(37)に秘策はありや? 棋聖戦第2局始まる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

「定刻になりました。藤井棋聖の先手番でお願いいたします」

 6月18日9時。兵庫県洲本市・ホテルニューアワジにおいて第92期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局▲藤井聡太棋聖(18歳)-△渡辺明名人(37歳)戦が始まりました。

 8時44分。渡辺挑戦者が入室。下座に着きます。名人、棋王、王将の三冠をあわせもち、将棋界席次1位の渡辺挑戦者。下座にすわるのは、挑戦者の立場でタイトル戦に臨むときぐらいです。

「第1局はいいところがありませんでした。間隔があいてリフレッシュできたので、改めて頑張っていきたいと思います」

 渡辺挑戦者は自身のブログにそう記しています。

 8時45分。藤井棋聖が入室。夏らしい白い羽織姿です。床の間を背にして、上座にすわりました。

 第1局がおこなわれたのは千葉県木更津市・龍宮城スパホテル三日月。藤井棋聖は次のように語っていました。

藤井「午後1時頃に満潮になるというお話があって、ちょっと見てみたんですけど、確かに、朝の時とかなり潮位が変わっていて。そういう自然のリズムの中で一局指すことができた気がします」

 第2局もまた海の近くです。

 藤井「第1局に続いて海が見える対局室を用意していただいて」

 第2局前日のインタビューで藤井棋聖はそう語っていました。

 両者駒を並べ終えたあと、藤井棋聖は手元に置かれている「十六茶」のペットボトルの蓋をあけ、グラスに注ぎます。

 9時。立会人の小林健二九段(64歳)が定刻になったことを告げ、両対局者は一礼。第2局が始まりました。

 藤井棋聖はグラスに注がれたお茶を口にしたあと、手をぬぐいます。そして一呼吸を置き、飛車の上の歩を1つ前に進めました。

 渡辺挑戦者もまた飛車先の歩を突きます。戦略家として知られる渡辺挑戦者。本局の作戦については練りに練ってきたのでしょう。

 3手目。関係者や報道陣が退出する中、藤井棋聖は3手目、飛車先の歩を三段目に伸ばしました。

 本局の記録係は井田明宏新四段(24歳)。師匠の小林九段が退出したあと、盤側の中央に移動して座りました。

 5手目。藤井棋聖は角の横に金を上がります。これで戦型は相掛かりと決まりました。

 互いに飛車先の歩を交換したあと、19手目、藤井棋聖は飛車取りに歩を打ちます。ここでコンピュータ将棋ソフトは飛車を8筋から3筋にスライドさせ、歩を取る手を最善としていました。しかし渡辺名人は取れる歩を取らず、飛車を自陣に引き上げています。考慮時間はわずかに2分。指し手の早さからして、事前に用意しておいた方針だったのかも知れません。

 9時45分頃、24手目。渡辺名人は中段に角を出ました。中段、浮き飛車の位置に構えている藤井棋聖の飛車に当て、態度を聞いています。

 10時過ぎ。藤井棋聖は飛車を自陣に引きます。

 10時11分頃、渡辺挑戦者は攻めの銀を飛車先の四段目に進めました。いわゆる「棒銀」。次第に戦機は高まりつつあるようです。本局の棋譜は公式ページをご覧ください。

 棋聖戦五番勝負では12時から13時までが昼食休憩となります。

藤井「食べものがすごく美味しいところというふうにも聞いていますので、明日を楽しみにしたいなと思っています」

 本局がおこなわれるホテルニューアワジは、棋聖戦五番勝負で羽生善治九段(永世棋聖)がきつねうどんを頼み続けたことでも有名です。

渡辺「(淡路島は)全国的に玉ねぎとかすごい有名ですけども、いろんな、お米とか、肉、魚とか全部あって」

 渡辺名人も好きなゲーム「桃太郎電鉄」(桃鉄)。最新版では、淡路島の物件に「タマネギ畑」(5000万円、収益率8%)があります。

 棋聖戦五番勝負の持ち時間は各4時間。通例では夕方か夜に終局となります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『あなたに指さる将棋の言葉』(セブン&アイ出版)など。

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