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黄金世代、いまだ健在! 進化続ける森内俊之九段(50)若手を連破し棋王戦予選突破!

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月3日。東京・将棋会館において棋王戦予選決勝▲森内俊之九段(50歳)-△長谷部浩平四段(27歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は17時12分に終局。結果は81手で森内九段の勝ちとなりました。

 森内九段はこれで棋王戦本戦(挑戦者決定トーナメント)進出決定。渡辺明棋王(37歳)への挑戦権を争うトーナメントに名を連ねることとなりました。

やはり強い黄金世代

 森内九段は2005年度、羽生善治棋王(当時)から棋王位を奪取し実績があります。

 森内九段の格からして、予選から参加するのは不思議な感じもしますが、現在はフリークラス所属(自らの意思で転出)のため、順位戦B級1組以上に与えられる本戦シードの権利はありません。

 一方、若手の長谷部四段は棋王戦参加3期目。今期、初めて予選決勝まで勝ち上がり、あと1勝で本戦進出という段階までこぎつけていました。最近では王位戦リーグ入りや竜王戦6組決勝進出などの実績もあります。

 両者の過去の対戦成績は森内九段の1勝(2020年、銀河戦予選)です。

 森内九段先手で10時、対局開始。戦型は相掛かりの最新形となりました。

 中盤でリードを奪ったのは長谷部四段。森内玉近くで的確に攻めをつなげ、優位に立ちました。

 森内九段は苦しい場面でこらえ、決め手を与えません。やがて長谷部四段に疑問手が出て、形勢は互角へと戻りました。

 終盤の寄せ合い。森内九段は一手の余裕を得て、長谷部玉に迫ります。最後は王手で桂を打ち捨ててきれいにフィニッシュ。長谷部四段が潔く投了して、森内九段の本戦進出が決まりました。

 森内九段は村中秀史七段、青嶋未来六段、藤森哲也五段、そして長谷部四段と、歳下の棋士を4連破。堂々の歩みで予選を突破しています。

 森内九段は2017年にA級から陥落。その後は理事職を務めて多忙なことなどもあり、成績が振るわない時期もありました。しかし最近は復調傾向。AI研究も取り入れ、さらに進化を続けています。最近では永遠のライバル・羽生善治九段にも勝利を収めました。

 黄金世代の一人、佐藤康光九段(51歳)は現在、日本将棋連盟会長職の激務をこなす一方、王座戦本戦でベスト4に進んでいます。

 平成の将棋界を席巻した黄金世代。令和の時代にタイトル奪取はあるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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