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藤井聡太二冠(18)は叡王挑戦権を獲得できるか? 5月17日、本戦1回戦で行方尚史九段(47)と対戦

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 豊島将之叡王(31歳)への挑戦権を獲得し、五番勝負に名乗りをあげる棋士は誰か?

 5月中旬、第6期叡王戦本戦トーナメントがいよいよ開幕します。

 注目の藤井聡太二冠(18歳)は5月17日、行方尚史九段(47歳)と対戦します。

 前年度からずっと勝ち続けている藤井二冠。まだ挑戦権を獲得したことのない叡王戦では、今期どこまで勝ち進むのでしょうか。

 藤井二冠は今期、段位別予選・八段戦Cに出場。長沼洋八段、杉本昌隆八段、広瀬章人八段を連破して勝ち上がりました。

 杉本八段との師弟戦では最後、▲6四桂というきれいな決め手が出ました。その一手は不二家のCMでも披露されています。

 行方九段は九段戦Aに出場。田中寅彦九段、谷川浩司九段、佐藤康光九段に勝って予選を通過しました。

行方九段と藤井二冠、過去の対戦

 両者は公式戦において過去に2回対戦しています(当時の段位は行方八段、藤井七段)。初手合は2018年度朝日杯準決勝でした。

 行方八段先手で戦型は矢倉。藤井七段は銀を素早く出て銀交換を果たします。その後、両者ともに自陣に銀を打ち合い、息長い中盤戦となり、藤井七段が次第にポイントをあげていきました。

 終盤戦に入り、藤井七段は角を捨てて王手をかけます。さらには飛車を切り捨てて角を取り、その角を行方陣に打ち込んで、一気呵成に勝勢を築きました。

 最後も詰将棋のようなきれいな収束。行方玉を詰まして、120手で勝利を収めました。

 藤井七段は決勝で渡辺明棋王(当時)にも勝ち、16歳にして朝日杯2連覇を達成しています。

 もう一局は2019年銀河戦Eブロック。棋譜は公式ページで公開されています。

 藤井七段先手で、行方八段が趣向をこらして、定跡形をはずれた相居飛車の進行に。序盤早々から角と銀桂の二枚換えの乱戦となり、駒得した藤井七段がわずかにリードしました。

 藤井七段は取った桂を急所に打ち、居玉の行方上部へと成り込み、さらには銀を打ってプレッシャーをかけます。

 まだまだ難しいと思われたところで行方八段が受けを誤まったか、藤井七段は一気に突き放します。最後は飛車を切り捨てて角を取り、その角を行方陣に打ち込んできれいにフィニッシュ。67手という比較的短手数での終局となりました。

 本局は両者3回目の対戦となります。

過去の叡王戦戦績

 行方九段は第1期叡王戦において準決勝まで勝ち上がっています。

 また叡王戦がタイトル戦に昇格した第3期でも準決勝まで進みました。

 藤井二冠(当時四段)は初参加の第3期、予選を勝ち抜いて本戦に進出。1回戦で深浦康市九段に敗れました。

 第4期は本戦1回戦で斎藤慎太郎王座(当時)に敗れています。

 また前期第5期は七段予選で村山慈明七段に敗れました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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