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渡辺明名人(36)棋聖戦挑戦者決定戦進出! 藤井聡太棋聖(18)へのリターンマッチまであと1勝!

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月16日。東京・将棋会館において第92期ヒューリック杯棋聖戦準決勝▲渡辺明名人(36歳)-△山崎隆之八段(40歳)戦がおこなわれました。

 対局室は特別対局室。すぐそばでは竜王戦2組決勝▲藤井聡太棋聖・王位(18歳)-△八代弥七段(27歳)戦が指されていました。

 本局はすぐ近くに座っている、藤井棋聖への挑戦権を争う戦いです。

 振り駒の結果、先手は渡辺名人となり、10時に対局開始。後手の山崎八段は金を3三に配置する角換わりの趣向から、早繰り銀で速攻に出ました。

 両者居玉のまま山崎八段は強気に攻めます。一方で、渡辺名人も強気に応対。激しく華々しい進行を経て、一気に終盤戦に入りました。

 山崎八段は龍(成飛車)、渡辺名人は馬(成角)を主軸にしての寄せ合い。難解な形勢で、勝敗不明の最終盤を迎えました。

 65手目。渡辺名人は馬で9筋隅の香を取り、6筋の山崎玉に詰めろをかけます。持ち時間4時間のうち、残りは渡辺59分、山崎28分。

 山崎八段はその28分すべてを投入して、もっとも有効な受けを探します。そして玉頭に桂を打ちました。渡辺名人は山崎玉の上に馬を引き、さらに詰めろをかけます。一手60秒未満で指さなければならない山崎八段。しかしこうした逆境で力を発揮するのが「ちょいワル王子」の真骨頂かもしれません。渡辺玉にいったん迫ってたあと、自陣に手を戻すという複雑な順で勝負に出ます。

 形勢をリードし、比較的に時間に余裕のある渡辺名人。少しずつ慎重に時間を使って勝ちに近づこうとします。しかし山崎八段も入玉を含みに懸命に粘り、どことなくあやしい雰囲気も漂いました。

 惜しまれるのは山崎八段の時間切迫。ただしもちろんその状況は、渡辺名人のゲームプランに含まれているのでしょう。形勢は再び渡辺名人が突き放していきます。

 最後は渡辺名人も時間を使い切って、両者一分将棋に。山崎玉は渡辺陣への入玉まであともう一歩というところまで逃げ込みます。そこを渡辺名人が押し返し、山崎玉は上下はさみうちで、ついに受けなしに追い込まれました。

 山崎八段は飛車を打ち、渡辺玉に王手をかけます。これは形作り。117手目、渡辺名人に玉をかわされると詰みません。

 19時51分、山崎八段投了。渡辺名人の挑戦者決定戦進出が決まりました。

 前棋聖の渡辺名人は、あと1勝で藤井現棋聖へのリターンマッチが実現します。

 もう一方の準決勝、永瀬拓矢王座-中村太地七段戦は4月21日におこなわれます。

 渡辺名人と山崎八段の対戦成績は、これで渡辺12勝、山崎4勝となりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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