Yahoo!ニュース

奨励会退会・女流棋士転進を発表した西山朋佳女流三冠(25)に蛸島彰子女流六段(75)からエール

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月1日。西山朋佳三段(女流三冠)がTwitterで奨励会からの退会、女流棋士への転進を発表しました。

 西山女流三冠は現在25歳。年齢制限の26歳にはまだ達しておらず、2021年度前期三段リーグに参加することもできました。しかしその前に退会の決断をしたことになります。

 西山女流三冠は2019年度後期三段リーグでは14勝4敗という好成績を収めて次点。四段昇段まであともう一歩のところまで迫っていました。

 また女流タイトルホルダーとして男性棋士が参加する一般公式棋戦に出場。竜王戦では6組ベスト4、棋聖戦では二次予選決勝にまで勝ち進んでいました。

 これだけの実力がありながらなかなか四段に昇段できないという事実は、奨励会の厳しさを端的に示すものでしょう。

 現在では奨励会退会のあとも、一般公式戦で規定の成績をあげれば「棋士編入試験」を受験するというルートも開かれています。

 これまでは奨励会員として3棋戦に出場してきた西山女流三冠。今後は女流棋戦すべてに参加できることになります。

 女流棋界は今後もしばらく、西山女流三冠と里見香奈女流四冠(29)の「二強」がタイトル争いの中心となりそうです。

 女性初の奨励会員であり、また初代女流名人の蛸島彰子女流六段(75歳)は、次のように語っていました。

蛸島彰子女流六段(談)

 西山さんは四段になってくれると思っていたんですけども・・・。三段リーグで次点を取っただけではなく、竜王戦や棋聖戦でも上まで勝ち続けて。やはり注目されている分、相当重たいものを背負っていたのでしょう。

 私は奨励会で「初段まではいきたいな」と思っていました。勝って進んでいくことの大変さが身にしみ、いろんな要因もあって、初段でやめました。西山さんは三段まで進み、四段昇段まであともう少しでした。一人階段を上がると、みんなそこを目指して「私もがんばろう」という気持ちになる。そうしてだんだん進歩していくのだと思います。

 でも私は、これからも西山さんのいい将棋を見られれば、それが一番うれしいです。私も西山さんの将棋を並べて勉強させてもらっています。大切なのはどこの位置で指すかではなく、西山さんらしいいい将棋を指して、自分を高めていくことだと思います。これからものびのびと、ファンの方やみんなを勇気づけるよう、指し続けていただけたらうれしいです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

松本博文の最近の記事