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「若い人が作る最先端の将棋に遅れをとらないようついていきたい」渡辺明棋王、防衛達成後インタビュー

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

渡辺明棋王「(王将戦七番勝負第6局と棋王戦五番勝負第4局が続いたが)間隔が短いのは二十代の頃に比べるときつくなってる感じはやっぱりしますけど(苦笑)。始まってしまえば、なんか考えてるうちに、そういう疲労みたいなのは感じないでやれることも多いですけどね。コンディション的には、昨日まではちょっとやっぱりよくなかったんですけど。今日はまあでも、一日昨日休んで、今日は起きたときはコンディションは戻ってるかなという気はしましたけどね。(タイトル戦37回登場で28期獲得は7割5分以上で羽生善治九段、大山康晴15世名人、中原誠16世名人を超える。番勝負の戦略や心得については)ちょっと上3人の方と比べても・・・(苦笑)全体の分母が違うんで。そこと比較してもしょうがないんですけど。確かにそうですね、防衛戦でなんとかうまくやってる分、28っていうところまでは来れたなという感じは。挑戦がそんなに多くないんで。そのへんの戦略性は、考えてることがうまくいってるのかもしれないですね。番勝負、同時に進んでいくときの戦法のローテーションとか、そういうのは考えてるのがうまくいってるのかもしれないですね。(竜王、王将、棋王と、秋から冬にかけてのタイトル戦に強いが)最初に持たせてもらったタイトルが竜王だったんで、それで秋冬に向かって仕上げていくというような感じが最初何年か続いたっていうか。そういうのはやっぱりあるかもしれないですね。一年中なかなかコンスタントにっていうのは大変なんで。最初何年かで、二十代前半の頃に、秋冬に仕上げていくような意識はあったんで。それが続いているのかもしれないですね。上半期のタイトル戦がすごい少ないんで、そういった要因はあるかとは思います、やっぱり。(コロナ禍の一年だったが)将棋の研究はそんなに変わらなかったですけど。でもできないことが多いんで、将棋の研究時間は増えたのかもしれないですね。できないことがやれない分。スポーツとか旅行に行ったりとか、例年やってるようなことができなかったんで。その分、仕方がなくて、っていうとあれですけど(笑)研究時間は増えたかもしれないですね。(自身の現状について)数字的に上向いてきたのは2018年度からなんですけど、そう考えるともう3年間ぐらいって感じになって。どんな競技でもいい状態って、3年、4年ぐらいしか続かない印象があるんで。特にスポーツとかだと。そのへんはやっぱりいろんな要因はあるんでしょうけど。だからそのへんは意識して、ずっと同じじゃなくてやっぱり違うことをやったりとか。変化をつけてやるようにはしてますね。研究の仕方だったり、作戦の立て方だったりとか。そのへん同じだと手の内もバレてくるんで。そのあたりは先手を打って変えていくというか。そういう意識はやっぱりありますね。あとは年齢的なことへの対応っていうか。そのへんはやっぱり考えていきたいっていうか、考えていかなくてはいけないっていうか。(タイトル戦で歳下からの挑戦が続くが)歳下の二十代の若い棋士との対戦となると、最新の将棋になりがちなので、意識してそのへんついていくっていうか。研究で遅れをとらないようにするっていうか。そういう意識は強くなるかなあ、とは思いますけどね。歳下の棋士と指す方が。上位で戦ってる棋士はみんな最新の戦法っていうかね、そういうの指してるんで、その中で遅れを取らないようにというか。そういうのはより意識して。年々そういう意識は強くなりますけども。今後もそこらへんは課題になっていくかなと思いますけどね。自分が歳を重ねていく中で、若い人がやっぱり最先端の将棋を作っていくっていう。それはいつの時代もそうだと思うんですけど、だからそこにどれぐらいまでついていけるか、っていうのが課題になるかなとは思いますけどね。そのへんを1月からのタイトル戦連戦で課題にしてたんで。そこは内容的にも、結果も出せたんで、十分対応できたかと思いますね。(中継視聴者に)今期棋王戦、なんとか今日で防衛することができました。ABEMAでは次は4月から名人戦になるかと思いますけど、視聴者の皆さんには引き続きそちらで楽しんでいただければと思いますし。自分としては今日で、年度のタイトル戦ってところでは終わったので、ちょっと休んでから新年度のタイトル戦に向かっていければと思います。ありがとうございました」

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『あなたに指さる将棋の言葉』(セブン&アイ出版)など。

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