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カド番の永瀬拓矢挑戦者(28)駒得でポイントをあげたか? 71手目を封じて王将戦第4局1日目終了

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 2月13日。東京都立川市「SORANO HOTEL」において、第70期王将戦七番勝負第4局▲永瀬拓矢王座(28)-△渡辺明王将(36)戦、1日目の対局がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 序盤の駆け引きのあと、先手の永瀬挑戦者は矢倉、後手の渡辺王将は雁木に組みました。

 昼食休憩のあと、永瀬挑戦者は47手目、つっかけられた7筋の歩を取ります。渡辺王将の動きに応じる形で、永瀬挑戦者は前線を押し上げていきます。

 永瀬玉の上部、左辺で桂交換がおこなわれたあと、渡辺王将は銀をぶつけていきます。永瀬挑戦者は慎重に時間を使いながら、渡辺王将の動きに自然に応じていきます。

形勢はわずかに永瀬ペースのようです。

 65手目。永瀬挑戦者は渡辺陣の雁木玉上部に桂を打ち込みます。これが痛烈なパンチ。十字飛車を実現させて、永瀬挑戦者が銀桂の駒得を果たしました。

 70手目。飛車の王手に対して渡辺王将は銀を打って受けます。

 この次、おそらく永瀬挑戦者は飛車を逃げる一手だと思われる局面です。夕方6時まではあと十数分。永瀬挑戦者は手を止め、時が過ぎるのを待ちました。

 やがて立会人の谷川九段が声をかけます。

谷川「6時になりました。永瀬王座の手番で封じてください」

永瀬「封じます」

 永瀬挑戦者はすぐに応じました。永瀬挑戦者は別室で71手目を封じ手として書き、封筒に入れます。永瀬挑戦者が2通の封筒を谷川九段に預け、対局1日目が終わりました。

 ところで永瀬挑戦者は本日、昼食、午後のおやつ、夕食と、いちご大福3連投に出たそうです。

 いちご好きとして知られる永瀬挑戦者。本領発揮の場面でしょうか。中に入っているいちごは「あまおう」。「魔王」と呼ばれる渡辺王将をくってやる・・・というパフォーマンではないでしょう。

 ちなみに渡辺王将はAbemaTVトーナメント決勝で永瀬王座ひきいる「チームバナナ」と対戦した際、冒頭でバナナを食べていました。

 明日2月14日は対局2日目。朝9時に封じ手が開かれ、対局が再開されます。

 ちなみに25年前の1996年2月14日は、羽生善治七冠が誕生した日でした。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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