Yahoo!ニュース

鉄壁流・森内俊之九段(50)生涯のライバル羽生善治九段(50)を降し棋聖戦本戦進出決定

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月28日。東京・将棋会館においてヒューリック杯棋聖戦二次予選決勝▲羽生善治九段-△森内俊之九段戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は17時19分に終局。結果は90手で森内九段の勝ちとなりました。

 森内九段はこれで本戦(決勝トーナメント)進出を決めました。

 両者の対戦成績は羽生78勝、森内59勝となりました。

森内九段、棋風通り手厚く勝利

 羽生九段は1985年、森内九段は1987年に四段としてプロデビュー。1988年の公式戦初対戦以来ずっと対局数を積み重ねてきました。本局は137回目の対戦となります。

 両者はタイトル戦番勝負の舞台では16回ぶつかり、制覇したのは羽生8回、森内8回と拮抗しています。

 特に名人戦七番勝負では史上最多の9回対戦。「羽生-森内の名人戦は春の季語」とまで言われました。

 棋聖戦五番勝負では2014年に対戦。羽生棋聖が防衛を果たしています。

 両者の直近の対局は2018年5月(銀河戦)。以来、2年以上の間を置いて「平成のゴールデンカード」再現となりました。

 両者のライバルである佐藤康光九段(51歳)は一足先に二次予選通過を果たしています。若き藤井聡太棋聖(18歳)に黄金世代の誰かが挑戦するとなれば、世間はまた盛り上がることでしょう。

 本局は羽生九段先手で、戦型は現代最新の相掛かりとなりました。

 羽生九段が盤面右側で積極的に動いて手を作ろうとするのに対して、森内九段は反撃。激しい中盤戦となりました。

 途中からペースを握ったのは森内九段。自玉に迫る羽生九段の馬(成角)を逆に追いかけながら、鉄壁の陣形を築き上げました。その上で満を持して羽生玉に迫っていきます。

 森内九段勝勢で迎えた最終盤。羽生九段は手段を尽くして追い上げます。しかし森内九段は正確に応じ、逆転を許しません。

 最後は森内九段が羽生九段の龍(成飛車)を追いながら自陣を手厚くします。

 90手目、森内九段の銀上がりで攻防ともに手段の尽きた羽生九段は投了。137回目の対局が終了しました。

 振り返ってみれば、両者がタイトル保持者としての肩書なしで対戦するのは、1989年早指し新鋭戦決勝、羽生五段-森内四段戦以来のこととなります。

 森内九段は最強最高のライバルを降し、その健在ぶりを示しました。今後も両者の対戦は続いていくことでしょう。

 羽生九段は今期棋聖戦の敗退が決まりました。藤井聡太二冠(王位・棋聖)とのタイトル戦番勝負実現は当面、今期王位戦にその可能性が残されています。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

松本博文の最近の記事