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すわ千日手? 渡辺明王将に永瀬拓矢王座が挑む王将戦七番勝負第2局、2日目始まる

松本博文将棋ライター
高槻城跡(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

 1月24日。大阪府高槻市・山水館において第70期王将戦七番勝負第2局▲永瀬拓矢王座(28歳)-△渡辺明王将(36歳)戦、2日目の対局が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 2日目朝。改めて駒を並べます。渡辺王将は盤上に開いた駒の山の中からまず「王将」を探し出し、所定の位置に据えます。続いて挑戦者の永瀬王座が「玉将」を取りました。

 本局の記録係を務めるのは地元高槻市出身の古森悠太五段(25歳)です。

 古森五段は順位戦ではC級1組に所属。若手のホープです。

 両者駒を並べ終えたあと、古森五段が前日の棋譜を読み上げます。戦型は相掛かりで、激しい進行となりました。

 コンピュータ将棋の対局場である「floodgate」では、同様の進行が見られたようです。

 1日目は56手目、渡辺王将が飛金両取りにかまわず、7筋に歩を垂らした手まで進みました。永瀬挑戦者は飛車を取るのか、それとも金を取るのか。あるいは歩成を受けるのか。難しい局面で57手目が封じ手となりました。

 2日目朝、立会人の久保利明九段が封じ手を開封します。

久保九段「封じ手は▲6一桂成です」

 永瀬挑戦者は金の方を取りました。

 59手目。永瀬挑戦者は取ったばかりの金を渡辺陣に打ちつけます。渡辺城の外壁にはりつくような厳しい攻めです。対して渡辺王将も金を打ってしっかりと受けました。

 ここで永瀬王座には金で飛車を取るか、銀を取るか。2つ選択肢があります。銀を取れば、以下はほぼ必然で、金銀を打ち替える典型的な千日手の筋に入ります。

 永瀬挑戦者はこれまで、千日手歓迎の姿勢で知られてきました。

 今年度叡王戦七番勝負第1局でも千日手が現れています。しかし最近の永瀬挑戦者は、必ずしも千日手を好んではないようです。

 61手目。永瀬挑戦者は1時間9分の長考で、銀ではなく飛車の方を取りました。これで当面、千日手の順は避けられました。

 形勢はほぼ互角。本局もまた、白熱の終盤戦が期待されます。

 今年度は叡王戦七番勝負で2局の持将棋が成立したことが話題となりました。

 持将棋は大変なレアケース。70期の歴史を誇る王将戦七番勝負においては、一度も現れていません。今期はどうでしょうか。

 タイトル戦番勝負では抜群の安定感を誇る渡辺王将。これまでずっと、歳下の挑戦者に敗れたことはありませんでした。しかしついに今年度棋聖戦、藤井聡太挑戦者(当時17歳、七段)に敗れています。

 現在の年齡は、渡辺王将36歳、永瀬挑戦者28歳。歳下の永瀬挑戦者は藤井現二冠に続くことができるでしょうか。ただし永瀬挑戦者にとって、渡辺王将は高い壁。現在までの対戦成績は渡辺12勝、永瀬3勝です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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