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藤井聡太二冠(18)地元名古屋で熱戦を制し朝日杯2回戦進出 14時から豊島将之竜王(30)と対戦

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月17日。愛知県・名古屋国際会議場において朝日杯本戦1回戦▲大石直嗣七段(31歳)-△藤井聡太二冠(18歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 振り駒の結果、先手は大石七段。対局は10時に始まりました。

 大石七段は居飛車、振り飛車、どちらも指すタイプですが、先手番では居飛車の場合が多いようです。

 しかし本局の作戦は意表の中飛車でした。角筋を止め、美濃囲いに囲って左辺に金を上がってツノ銀に構えるオールドスタイル。大山康晴15世名人や大内延介九段といった往年の振り飛車の名手を思い起こさせるような序盤作戦でした。

 藤井二冠が6筋の歩を突いたところで、大石七段はすぐにその筋から歩をぶつけていきます。

大石「序盤は積極的にと思いまして」「部分的に、この形になったら仕掛けてみようかなとは思っていたんですけど。どうでしたかね。無理筋でした?」

藤井「そこで仕掛けられるとは思っていなかったので・・・。ただ、こちらの玉形も薄いので、対応できるのかどうか、難しいと思いました」

 中央から左辺にかけて戦いが始まり、次第にリードを奪ったのは藤井二冠でした。

大石「少しずつ苦しい展開だったかなあ、と思っています」

 藤井二冠優勢で迎えた終盤戦。そこで大石七段はうまく持ちこたえ、形勢は次第に接近してきたようにも見えました。

 藤井二冠は74手目、大石七段は81手目に持ち時間40分を使い切り、あとは両者ともに一手60秒未満で指す一分将棋です。

藤井「中盤はうまく駒をさばくことができて、少し指せるのかなと思っていたですけど。そのあと、秒読みで粘り強く指されて。最後まで大変な将棋だったのかなという気がします」

 本日、並行しておこなわれていた1回戦▲豊島将之竜王(30歳)-△飯島栄治七段(41歳)戦は先に終わり、豊島竜王の完勝。本局の勝者は2回戦で豊島竜王と対戦することが決まりました。

 101手目。大石七段は攻防に利く角を打ちます。ともかくも金取りなので、藤井二冠がどう受けるかと見られたところ、藤井二冠は桂を打って強く攻めに出ました。

深浦「ひょおおお」

 驚く解説の深浦康市九段。驚くべきことに、これがギリギリで大石玉の長手数の詰めろになっていました。短時間のうちに、いったいどれほど先を読んでいるのか。一局のうちに、必ず何度か観戦者を驚かせるような手を見せるのが、藤井二冠の将棋です。

 大石七段もじっと受け、熱戦は続きます。やがて藤井二冠が再び形勢を突き放し、勝勢となりました。

 128手目。今度は藤井二冠が攻防の角を放ちます。これが最後の決め手でした。

 12時10分。大石八段は132手目、自玉横に王手で打たれた飛車を見て投了を告げました。

 かくして藤井二冠は熱戦を制し、大方の予想通りというべきか、トーナメント表左側の山には現棋界四強の名が並びました。

 2回戦の抱負を聞かれた藤井二冠。

藤井「えっと・・・。午後の相手もまだ知らないんですけど(笑)。(豊島竜王と告げられ)対戦するのも大変な相手だと思うので、今回、こういった舞台で対局できることをうれしく思いますし、自分の力を出し切ってせいいっぱい指せるようにしたいなと思います」

 豊島竜王と藤井二冠は過去に6回対戦し、成績は豊島竜王の6連勝です。藤井二冠、初勝利はなるでしょうか?

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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