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永瀬拓矢叡王防衛か?豊島将之挑戦者奪取か?千日手か?持将棋か?叡王戦七番勝負第9局は中盤の佳境

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 9月21日。第5期叡王戦七番勝負第9局▲豊島将之竜王(30歳)-△永瀬拓矢叡王(28歳)戦がおこなわれています。

 戦型は角換わり腰掛銀。先手の豊島挑戦者は金金銀の3枚で堅く玉を囲います。対して永瀬叡王は守りの銀を前線に出して積極的に指し進めていきます。

 12時前、後手の永瀬叡王が先攻しました。

 53手目、豊島挑戦者が受けの歩を打ったところで12時30分、昼食休憩に入りました。

 13時30分、対局再開。永瀬叡王は自陣の弱点である桂頭にじっと歩を打ちました。対して豊島挑戦者は長考に沈みます。

 豊島挑戦者の今期成績は10勝10敗2持将棋です。

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 10月からは竜王戦七番勝負の防衛戦が始まります。挑戦者は羽生善治九段。こちらも大変注目されるシリーズとなるでしょう。

 永瀬叡王の今期成績は18勝7敗2持将棋です。

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 対局数ランキングの上位3人は1位から順に永瀬叡王、藤井二冠、豊島挑戦者と納得の顔ぶれが並んでいます。

 ちなみに今年度の勝率ランキングでずっとトップの位置にいるのは、勝率8割を超えている藤井二冠ではありません。それが誰かといえば豊島挑戦者の師匠、勝率10割(1勝0敗)の桐山清澄九段です。

 豊島挑戦者の長考中に15時を過ぎ、おやつの時間になりました。

 両者ともに選択はクラシックプリン。筆者も近所のローソンにそれを買いに出かけようと思ったところで、豊島挑戦者の手が動きました。

 考えること2時間2分53秒。豊島挑戦者は攻めに転じました。

 59手目。豊島挑戦者は腰掛銀をぐいっと前に進めます。相手の腰掛銀にぶつけ、音が聞えてきそうな鋭い攻め手。観ている方からすれば、ここからが面白いところです。

 時刻は17時を過ぎました。千駄ヶ谷の町には防災無線で「夕焼小焼」のメロディーが流れます。現在は永瀬叡王が62手目を考慮中。先はまだまだ長そうです。

 前代未聞の七番勝負第9局を制するのは永瀬叡王か、それとも豊島竜王か。あるいはまた、千日手や持将棋が生じたりもするのでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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