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ダンディなベテラン久保利明九段(45)3回目の挑戦で王座獲得なるか? 五番勝負第1局はこれから夜戦

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 9月2日。神奈川県秦野市鶴巻温泉「元湯 陣屋」において、第68期王座戦五番勝負第1局▲永瀬拓矢王座(27歳)-△久保利明九段(45歳)戦がおこなわれています。

 午前中は和服姿だった永瀬王座。昼休みにはスーツに着替えて対局室に戻ってきました。叡王戦などでも見られた、永瀬流の変身術です。

 13時、対局再開。

 66手目、久保九段は4筋の飛車をじっとひとつ引いて、あくまでも待ち続けます。

 久保九段は今回が3回目の王座挑戦となります。

 最初に五番勝負に登場したのは今から19年前の2001年。26歳七段の時のことでした。

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 王座に君臨していたのは、五番勝負でほぼ無敵を誇っていた羽生善治王座でした。久保挑戦者は全局四間飛車で挑みましたが、結果は1勝3敗で敗退となりました。

 2回目の挑戦は2007年でした。

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 なんでも自在に指しこなす羽生王座は、第1局、第2局で相振り飛車を採用して連勝。第3局は久保挑戦者が四間飛車で、結果はまたもや羽生王座の勝ちでした。

 王座戦では残念な結果が続いた久保現九段でしたが、のちにはタイトル通算7期(王将4期、棋王3期)の実績を築きました。もし今シリーズを制すれば、王座初獲得となります。

 若い頃から「イケメン」として知られていた久保九段。現在似合うと評判のひげは、コロナ禍で在宅が続いて伸ばし始め、愛着が湧いて続けているものだそうです。

 本局、久保九段は待ち続けながら、「振り飛車ミレニアム」からオーソドックな銀冠に組み替えます。

 対して永瀬王座は金銀4枚の穴熊をさらに堅く整備します。客観的にみれば、永瀬王座が作戦勝ちを収めたようです。

 永瀬王座はスーツのジャケットも脱いで、半袖シャツ姿。この方が戦いやすいという合理的な精神が服装にも表れています。

 永瀬王座は飛車を中央に展開し、中央の位を取って、その下から金を押し上げていきます。対して久保九段は相手の飛車がいる5筋から反発。永瀬王座も強く踏み込んで、一気に激しい戦いに入りました。

 金交換のあと、久保九段は永瀬陣に金を打ち込んで穴熊を薄くします。対して永瀬王座は再び穴熊に金を打ちつけ、堅さを主張します。

 117手目、永瀬王座が盤上中央に馬を引きつけた局面で17時30分、夕方の休憩に入りました。

 持ち時間5時間のうち、残り時間は永瀬1時間5分、久保1時間32分。時間も盤上の形勢も、いい勝負のようです。

 短い食事時間のあと、両対局者は盤の前に戻ってきました。

 18時、対局再開。久保九段は穴熊の方にと金を寄せていきます。

 永瀬王座もその手は読んでいたのか、すぐに桂を打って久保陣の守りの要である金を攻めました。

 進んで、形勢は少し、永瀬王座に傾きつつあるようにも見られます。久保九段の粘りは見られるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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