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9月に女流棋士としてデビューする野原未蘭さん(17)快進撃で倉敷藤花戦ベスト4進出

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 8月14日。東京・将棋会館において第28期大山名人杯倉敷藤花戦準々決勝▲小高佐季子女流1級(18歳)-△野原未蘭アマ(17歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は14時46分に終局。結果は98手で野原さんの勝ちとなりました。

 野原さんはこれでベスト4に進出。準決勝では中井広恵女流六段(51歳)と対戦します。

 本棋戦ベスト8進出の時点で女流棋士2級の資格を得ている野原さん。9月からは森内俊之九段門下の女流棋士としてデビューすることが本局終了後に発表されました。

野原さん、あと2勝で挑戦権獲得

 小高女流1級は藤井聡太棋聖と同じ2002年生まれで、現在高校3年生。千葉県佐倉市の出身です。

 野原さんは高校2年。倉敷藤花戦でベスト8入りを果たし、規定をクリアして女流棋士となる資格を得ました。

 野原さんは富山県富山市出身。やはり地元期待の星です。

 女流棋士の昇段規定では、倉敷藤花戦でベスト4に進出すると女流初段へと昇段できます。つまり小高女流1級にとっては、初段昇段の一番となります。

 先手番の小高女流1級は中飛車志向で、初手に中央の歩を突きます。

 対して野原さんはどこの筋の歩も突かず、銀を上がりました。これが野原さんが得意とする「英春流」の骨子です。

 野原さんの師である鈴木英春さんは伝説のアマ強豪。オリジナル戦法でアマトップとして活躍してきました。その師匠の戦法を受け継ぐのが野原さんです。

 小高女流1級の中飛車に対して、野原さんは飛車を一つ横に寄せる「袖飛車」で攻めの形を作ります。

 野原さんは角と銀桂の二枚換えで駒得を果たし、さらには飛車を成り込んで龍を作ります。

 対して小高女流1級は手にした角を龍取りに打って反撃。華々しい中盤戦となりました。

 56手目。野原さんは「角には角」の格言通り、相手の角の利きに角を打って受けます。持ち時間2時間のうち、残り時間は小高29分、野原47分。

 ここで小高さんはすべての時間を使って角交換に応じます。形勢はほぼ互角。ただし時間では大きく差がつきました。

 終盤戦。小高女流1級が攻めを催促したところで、野原さんはスパートをかけます。

 手番が小高女流1級に回って、野原玉に寄せがあるかどうか。きわどいところですが、野原さんは正確に受けてしのぎます。

 最後は野原さんが一手勝ちを収めました。

 野原さんはこれでベスト4進出の快挙です。準決勝では、倉敷藤花3期ほかタイトル獲得通算19期を誇る中井女流六段との対戦となります。

 準決勝、挑戦者決定戦とさらに勝ち進めば、里見香奈倉敷藤花(28歳)と三番勝負を戦うことになります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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