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順位戦通算30勝1敗の藤井聡太七段(17)元A級の人気棋士・橋本崇載八段(37)とB級2組で対戦中

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 7月6日10時。東京・将棋会館においてB級2組順位戦2回戦▲藤井聡太七段(17歳)-△橋本崇載八段(37歳)戦が始まりました。

 1回戦では両者ともに白星スタート。両者の対戦は本局が初めてとなります。

 持ち時間は各6時間(チェスクロック使用)。通例では夜に終局となります。

藤井七段、重要対局続く

 藤井七段の今期成績は11勝1敗。王座戦二次予選で大橋貴洸六段に敗れた以外は、すべて勝っています。直近の王位戦七番勝負第1局も「強い」以外の言葉が見つからない、完璧に近い内容での勝利でした。

 王位戦第1局の後、記者会見に臨む藤井七段は、大変に疲れているようにも見えました。

 将棋界で勝ち続ける者の宿命として、藤井七段はおそろしいほどのハードスケジュールの中での戦いが続きます。

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 藤井七段は棋聖戦五番勝負、王位戦七番勝負と2つのタイトル戦に出場し、他でも対局が目白押しです。本局ももちろん、重要な一局です。

 B級2組2回戦の一斉対局は7月8日。藤井七段にとっては棋聖戦五番勝負第3局の前日で、事前に予定が変更され、本日に前倒しでおこなわれることになりました。

 1回戦、橋本八段は谷川浩司九段、藤井七段は佐々木勇気七段に勝っています。

 前局の勝利で、藤井七段の順位戦通算成績は30勝1敗となりました。そのため「順位戦で圧倒的強さ」という表現をしばしば目にします。

 藤井七段は竜王ランキング戦はデビュー以来無敗の20連勝。朝日杯は2回連続優勝した後、昨年度準決勝で初めて敗れて16勝1敗。そもそもトータルの勝率は8割台半ばですので「順位戦で圧倒的強さ」というよりは「順位戦も圧倒的強さ」という表現が適当ではないかと思われます。

 橋本八段は6月2日の棋聖戦準決勝・佐藤天彦九段-藤井聡太七段戦でABEMA解説を担当していました。

 その時、橋本八段は、今後はともかく、最初の対局では上座に着きたい、という旨を述べています。

 もし藤井七段が棋聖位を獲得すると、序列は一気にジャンプアップ。豊島将之竜王・名人、永瀬拓矢叡王・王座、渡辺明棋王・王将、木村一基王位に次ぐ序列5位に「藤井棋聖」が位置づけられることになります。そうするとほとんどの棋士を相手に、今後は上座に着くことになります。

 もし本局が棋聖戦第3局以後に移動し「藤井棋聖」が誕生した後であれば、「藤井棋聖」が上座となるところでした。

 可能性だけをいえば、竜王戦本戦で羽生九段と「藤井棋聖」が勝ち上がり、挑戦者決定戦三番勝負で対戦するということもあります。その時には羽生九段と「藤井棋聖」、どちらが上座につくのか、ということが話題となるかもしれません。

 藤井七段は居飛車党。橋本八段は居飛車、振り飛車、どちらも指せるタイプです。

 本局は藤井七段の先手。初手に飛車先の歩を突いて、居飛車で臨むことを宣言します。

 橋本八段はまず角筋を止めて態度を保留。そして次第に相居飛車となる骨格が固まり、16手目に飛車先の歩を突きました。

 藤井七段は左美濃から腰掛銀に組んで、いつでも速攻できる構えです。

 対して橋本八段は飛車先の歩を交換して、一歩を手持ちにしました。

 27手目。藤井七段が3筋の歩を突いた局面で12時、昼食休憩に入りました。

 12時40分、対局は再開されています。28手目、橋本八段は右の銀を引いて、銀矢倉への組み換えを見せました。13時現在は藤井七段の手番。中盤に惜しみなく時間を使う、いつもの藤井七段の対局スタイルが見られるでしょうか。

 持ち時間は各6時間(チェスクロック使用)の長丁場。夕食休憩をはさんで、おそらくは夜遅くに決着となります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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