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「ラブミー☆テンドゥー」将棋駒といで湯とフルーツの里・天童で名人戦七番勝負第2局始まる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成・写真撮影:筆者)

 6月18日。山形県天童市・天童ホテルにおいて第78期名人戦七番勝負第2局▲渡辺明三冠(36歳)-△豊島将之名人(30歳)戦、1日目の対局が始まりました。棋譜は「名人戦棋譜速報」などをご覧ください。

 対局開始の定刻は午前9時。その10分以上前に挑戦者の渡辺三冠(棋王・王将・棋聖)が部屋の入口に近い下座に着きます。

 8時51分。豊島将之名人が入室。床の間を背にして、上座にすわります。

 豊島名人は盤上に置かれた駒箱を手にして、蓋を開け、中から駒袋を取り出してひもをほどき、盤上に駒を出します。

 対局場は駒の産地として有名な天童。前日の検分時には対局に使われる駒の候補として5組の名品が用意されました。

 天童藩の幕末の中老、吉田大八(1832-68)が将棋の駒作りを奨励して以来、天童では駒の製作がさかんとなりました。旧暦6月18日は吉田大八の命日にあたります。

 2013年、天童市観光物産協会のキャラクターとして誕生した「こま八」は、吉田大八をモデルとしています。

 羽海野チカさん作の漫画『3月のライオン』でも天童はしばしば登場します。作中に登場する島田開八段は天童出身の設定となっています。映画では佐々木蔵之介さんが演じていました。

 本記事タイトルの「ラブミー☆テンドゥー」とは、やはり『3月のライオン』作中に登場する辻井武史九段の言葉です。

 今年はコロナ禍によって、残念ながら恒例の「人間将棋」は中止となりました。

 天童はタイトル戦の対局がよくおこなわれる場所でもあります。

 8時55分。両者ともに駒を並べ終わって、対局開始の時間を待ちます。

 第1局は振り駒の結果、先手は豊島名人。戦型は角換わり。結果は渡辺挑戦者の勝ちでした。

 第2局は先後が入れ替わって、渡辺挑戦者の先手となります。

 定刻10時。

「それでは定刻になりましたので、渡辺三冠王の先手でお願いします」

 立会人の田中寅彦九段がそう告げて、両対局者は「お願いします」と一礼します。

 渡辺三冠はマスクをはずしながら茶碗に手を伸ばし、勢いよくお茶を飲みます。再びマスクをして、眼鏡に手をやり、襟元を正し、しばし瞑想。

 対局室内に報道陣のシャッター音が響く中、飛車先の歩を手にして、一つ前に進めました。

 対して豊島名人も同様に、飛車の筋の歩を突きます。

 戦型は相掛かりに進みました。

 10時30分。両対局者にはフルーツが出されます。

「将棋駒といで湯とフルーツの里」

 これが天童のキャッチフレーズ。現在はさくらんぼのシーズンです。

 31手目。渡辺挑戦者が8筋の歩を一つ伸ばした局面まで進み、豊島名人の手番で12時30分を迎えました。1時間の昼食休憩をはさんで、対局は13時30分に再開されます。

 本日1日目は18時30分に手番の側が次の手を封じて終了。明日2日目は午前9時からの再開となります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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