将棋界の未来を切り開く神童・藤井聡太七段(17)王位戦リーグ白組を破竹の5連勝で制し挑戦者決定戦進出
6月13日。東京・将棋会館において王位戦リーグ白組最終5回戦▲阿部健治郎七段(0勝4敗)-△藤井聡太七段(4勝0敗)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。
10時に始まった対局は19時5分に終了。結果は64手で藤井七段の勝ちとなりました。
藤井七段はリーグ白組を5連勝で制して優勝。6月23日におこなわれる挑戦者決定戦進出を決めました。藤井七段はあと1勝で木村一基王位(46歳)への挑戦権獲得となります。
紅組で優勝したのは永瀬拓矢二冠(27歳)。
白組の藤井七段同様、こちらも5戦全勝という圧倒的な成績でした。そして棋聖戦に続いて王位戦でもまた、永瀬-藤井の挑決となります。
現在は棋聖戦五番勝負で渡辺明棋聖(36歳)に挑戦中の藤井七段。もし王位戦でも挑戦となれば、一気に二冠獲得も視野に入ってきます。なんとも恐ろしい17歳と言うよりありません。
藤井七段、圧巻のリーグ5連勝
4月20日に予定されていた本局は2か月近く延期され、ようやく本日指されることになりました。
藤井「2か月弱対局がない状況でしたけど、その間に自分の将棋をじっくり見つめ直すことができたのかなと思ってます」
阿部「作戦の選択がちょっといいかわるいか、わからなかったんですけど、ステイホーム期間中の準備が足らなかったのかなという気がしましたね」
阿部七段先手で戦型は角換わり。そしてほとんど類例のない乱戦となりました。ただし阿部七段は過去に経験があったようです。
阿部「以前指したことがあって、けっこう難しかったのでもう一度やってみようかと思ったんですけど、上手く対応されたので全体的に自信がなかったですね。バランスを取る順がちょっと難しくて。形勢は難しい可能性があるんですけど、ちょっと私の力では局面のバランスを取れなくなってしまって。中盤で競り負けた感じがしました」
藤井「かなり激しく踏み込まれて、こちらの玉が薄い形で戦いになってしまったので、少し自信がないのかなと思いながら指していました」
中盤でリードを奪ったのは藤井七段。難しい局面でポイントを重ねていきました。
しかし阿部七段も実力者。苦しい局面で時間を使って考え、決定的な差をつけられずに手段を尽くします。そしてその頑張りが功を奏し、一時は楽しみが多くなったようにも思われました。
消費時間は最初、藤井七段が多く先行していました。しかし阿部七段も多く使って、いつしか逆転します。
54手目。藤井七段が攻めに香を打ったところで、残り時間は阿部23分、藤井27分。
阿部七段は3分を使った後、桂を打って藤井玉への寄せを目指しました。結果的にはこの選択が敗着となったようです。
62手目。藤井七段は△7七角成と、ただで取られるところに角を成り込みます。
藤井「△7七角成としたところで、少しいけそうかなというふうに思いました」
これが華麗な決め手でした。もし金で取られると阿部玉は詰みます。
63手目。阿部七段は打った桂の顔を立てるように、桂を成ります。これで藤井玉も受けが困難となりました。しかし一手早く、阿部玉は詰んでしまいます。
64手目。藤井七段は阿部玉の上部に飛車を成り込みます。阿部七段はその手まで見届けて、投了を告げました。
藤井七段は瞠目の5連勝で白組優勝を果たしました。
2位の羽生善治九段は4勝1敗。結果的には1回戦の羽生九段戦の結果が大きなものとなりました。
藤井七段はリーグを次のように振り返っています。
藤井「どの対局も一手一手難しい将棋で・・・。稲葉八段戦や上村五段戦では苦しい場面もあったと思うので。こういう結果を残せてよかったなと思います。(挑戦者決定戦は)しっかり調整していい将棋が指せればと思っています」
藤井七段は6月の対局再開以来、ハードスケジュールの日程が続いています。
藤井「今まで経験したことのないスケジュールだったので、タイトなところはあったんですけど、次の対局(20日、竜王戦3組決勝・杉本昌隆八段戦)まで一週間空くことになるので、そこでまたしっかり、状態を整えたいなと思います」
6月20日の師弟戦。そして23日の王位戦挑決・永瀬二冠戦もまた、歴史的な一番となりそうな予感がします。