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棋聖挑戦者は永瀬拓矢二冠(27歳)か? 藤井聡太七段(17歳)か? 令和将棋界のゆくえ占う大一番開始

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月4日10時。東京・将棋会館において第91期ヒューリック杯棋聖戦・挑戦者決定戦、永瀬拓矢二冠(27歳)-藤井聡太七段(17歳)戦が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 両者は一昨日6月2日におこなわれた準決勝でそれぞれ勝ち上がってきました。

 本局の勝者は渡辺明棋聖(36歳)への挑戦権を獲得します。五番勝負の開幕は6月8日からとなります。

 もし藤井七段が挑戦者となった場合には、第1局時点での年齢が17歳10か月20日。1989年に屋敷伸之四段(現九段)が棋聖戦に登場した際の17歳10か月24日をわずかに上回って史上最年少記録の更新となります。

 令和の将棋界のゆくえを占う一番として、また藤井七段の大記録がかかった一番として、本局は社会的にも注目を集めています。

 対局がおこなわれるのは将棋会館4階の特別対局室。9時36分、永瀬二冠と藤井七段が相次いで対局室に入りました。

 床の間を背にして上座にすわるのは永瀬二冠。押しも押されもしないトップ棋士の一人です。現在の将棋界の序列では、豊島将之竜王・名人、渡辺明棋聖(棋王・王将)に次いで3位となります。

 永瀬二冠、藤井七段ともに白いマスクをしています。対局室でのマスクの着用について、将棋連盟は昨日、次の通りの発表をしました。

また、対局室への入室においては、マスク着用を推奨しておりますが、マスク着用により思考中の息苦しさを感じる対局者もおり、各々の判断で推奨としております。一方、マスク着用を推奨するにあたっては、水分補給の際にマスクを触らなければならないなど、マスクを取り替えたいという希望もあることから交換用のマスクの用意を行っております。

出典:日本将棋連盟「緊急事態宣言の全国的解除の発表を受けて」【6月3日更新】

 9時43分。両者は駒を並べ始めます。上位者の永瀬二冠が「王将」、下位者の藤井七段が「玉将」を取って、大橋流で駒を所定の位置に置いていきます。

 記録係が永瀬二冠側の歩を5枚手にして振り駒。「歩」が3枚、「と」が2枚出て、永瀬二冠の先手となりました。

 定刻10時。

「永瀬先生の先手番でお願いします」

 記録係の声がして両者一礼。対局が始まりました。

 永瀬二冠は初手、飛車先の歩を突きます。

 対して藤井七段は右手でグラスを手にし、左手でマスクをすこしずらして、冷たいお茶を口にします。そして藤井七段もまた、飛車の前の歩を一つ先に進めました。

 取材陣が退出した後、藤井七段、永瀬二冠の順に上着を脱ぎます。永瀬二冠は半袖シャツです。

 戦型は相掛かりとなりました。古くからある戦法ですが、飛車先の歩を交換するところでも駆け引きがあるのが現代風です。まず最初に交換したのは、後手番の藤井七段でした。

 開始20分の時点では16手まで進んでいます。

 持ち時間は各4時間。昼食休憩をはさんで、通例では夜に終局となります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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