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東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻博士後期課程在籍中・谷合廣紀四段(26)公式戦初戦勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 5月27日。東京・将棋会館において第92期ヒューリック杯棋聖戦一次予選▲門倉啓太五段(32歳)-△谷合廣紀四段(26歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は12時39分に終局。結果は112手で谷合四段の勝ちとなりました。

 谷合四段は前期三段リーグを勝ち抜いて四段昇段を決め、今年4月に棋士に昇格。デビュー戦を白星で飾りました。

個性的な振り飛車党

 谷合四段は現在、東大の大学院で電子情報学を専攻しています。

 将棋の棋風については、師匠の中座真七段は「個性的で受けが強い」と評しています。

 四段昇段後の公式戦初戦は第92期ヒューリック杯棋聖戦の一次予選、門倉五段戦となりました。

 渡辺明棋聖への挑戦権を争う第91期棋聖戦本戦は、これから準決勝がおこなわれようというところです。

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 谷合四段が奨励会三段時に対戦して土をつけた藤井聡太現七段は現在、タイトル初挑戦まであともう少しというところまで進んでいます。

 ▲門倉-△谷合戦、後手番となった谷合四段は四間飛車の作戦を取ります。三段リーグ時には、先手であれば中飛車、後手であれば四間飛車を採用していたそうです。

 角交換の過程で向かい飛車となった後、谷合四段は玉形を金無双としました。金を二枚横に並べる囲いです。

 相振り飛車ではない、居飛車VS振り飛車の対抗形では、これまで金無双はほとんど見られませんでした。しかし最近、大橋貴洸六段の「耀龍四間飛車」の登場など、対抗形でも金無双に類似した形が、公式戦でもしばしば見られるようです。

 谷合四段は自陣から門倉五段の飛車をねらう、遠見の角を打ちます。この角を打てるのが、金無双の特長の一つのようです。対して門倉五段は的確に応じ、中盤の折衝で門倉五段がポイントをあげました。

 しかし門倉五段が玉頭から動いたのが一手早すぎたようで、もう一手飛車を引いて待つ順が優ったようです。門倉五段の動きに応じて谷合四段が盛り返し、やがて逆転しました。

 谷合四段は銀と刺し違えて飛車を切り、門倉五段の玉頭から攻め込みます。最後は谷合四段が自陣近くまで逃げ込んできた門倉玉をとらえ、112手で終局。見事にデビュー戦を白星で飾りました。

 続いて14時からは2回戦▲谷合四段-△片上大輔七段(38歳)戦がおこなわれました。ここでも谷合四段は四間飛車から金無双で臨んでいます。

 終局は16時40分。結果は106手で片上七段の勝ちでした。谷合四段はプロ2戦目では、東大の先輩である片上七段に貫禄を示された格好となりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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