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「平成の将棋界を占う大一番」1988年度NHK杯準決勝▲谷川浩司名人-△羽生善治五段戦、再放送決定!

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 2020年度のNHK杯将棋トーナメントはコロナ禍の影響により1回戦の進行がストップしています。代わりに現在は、羽生善治五段(当時17歳から18歳)が登場した1988年度の名勝負が再放送されています。

 5月24日には3回戦の大山康晴15世名人-羽生五段戦、5月7日には準々決勝の加藤一二三九段-羽生五段戦が放映され、大きな反響を呼びました。

 そして5月31日には準決勝、谷川浩司名人・棋王(当時26歳)と羽生五段の対局が放映されます。

 番組が収録されたのは1989年2月6日。

「今日は平成の将棋界を占うような大一番かと思います」

 番組冒頭、司会を務める永井英明さんはそう告げています。

 元号が昭和から平成へと代わって間もないこの時。棋界の若き覇者・谷川名人の地位をうかがう存在として、十代の羽生五段やその一群の世代が目覚ましい台頭を見せていました。

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永井「(トーナメント表の)一番左の谷川名人がいま名人3期。5期で永世名人になりますから、17世名人に一番近い人と言えるでしょう。そして18世名人はこの人じゃないかという噂の人。羽生五段の名前が見えます。今日の対戦は、その羽生善治五段と谷川浩司名人の一戦でございます」

 永井さんの口上からも、新しい時代が始まりつつあるという高揚感が伝わってきます。

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 両者は1986年の早指し選手権で初めて対戦。羽生四段(当時)にとってはフルシーズン参戦1年目のルーキーイヤーでした。谷川、羽生の長きに渡る対決の初戦、結果は羽生四段の勝ちでした。

 1987年度のNHK杯2回戦では、羽生四段が横歩取りの新機軸を披露しました。

 こちらも結果は羽生四段の勝ちでした。

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 1988年度。羽生五段は新人王戦で優勝しています。当時の記念対局は公式戦扱いで、時の名人が新人王に胸を貸す形でおこなわれました。谷川名人-羽生新人王戦は谷川名人が貫禄を示しています。

 1988年度NHK杯。羽生五段は大山15世名人、加藤九段、そして谷川名人と、名人経験者との3連戦となりました。谷川名人はこの時、和服で対局に臨んでいます。

「平成の将棋界を占う」

 まさにその言葉通りの大一番。元号が令和に変わった現在、31年の時を経て、改めて両雄の名勝負を振り返る価値は高そうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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