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軍曹と呼ばれし猛将・永瀬拓矢二冠(27)王位戦リーグ紅組4連勝でプレーオフ以上確定

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月7日。東京・将棋会館において王位戦リーグ▲佐藤秀司七段(52歳)-△永瀬拓矢二冠(27歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は19時2分に終了。結果は108手で永瀬二冠の勝ちとなりました。

 永瀬二冠のリーグ成績は、これで4勝0敗。プレーオフ以上が確定しました。

 佐藤七段0勝4敗となりました。

 王位戦リーグもいよいよ終盤戦。白組の方は明日8日、羽生善治九段-稲葉陽八段戦がおこなわれます。

永瀬二冠、矢倉中飛車で快勝

 本局は佐藤七段先手で、戦型は矢倉に。対して後手番の永瀬二冠は矢倉中飛車を採用しました。昭和の昔からある作戦が「温故知新」で現代に復活するあたりが、将棋の面白いところです。

 佐藤七段は金銀3枚の堅い矢倉を完成させます。一方の永瀬陣は金銀2枚ずつが左右に配置されたバランス重視の構えです。

 中盤、佐藤七段はぐいと攻めの銀を五段目に上がります。さらには銀桂交換の駒得を実現させて好調な攻めが成功したかのようにも見えました。しかしそれ以上に永瀬二冠の反撃も厳しく、まずは永瀬二冠がリードを奪いました。

 永瀬二冠は自陣に手厚く銀を埋める、いつもながらの負けない指し方。玉から離れていた金も、いつしか盤上中央の要所に進んではたらきます。

 最後は永瀬二冠が佐藤七段の飛車を召し上げ、佐藤陣に王手で打ち込んだところで終局。永瀬二冠らしい安定した指し回しが光った一局となりました。

 リーグ4連勝の永瀬二冠は、最終5回戦の本田奎五段に勝てば文句なしの紅組全勝優勝。挑戦者決定戦に進んで、白組優勝者と最終決戦をおこないます。

 もし本田戦に敗れたとしても同成績の4勝1敗者がいなければ優勝。いればプレーオフを戦うことになります。

 棋聖戦でもベスト4に進出している永瀬二冠。

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 このまま三冠、四冠とタイトルが増える可能性もあります。ファンからは長く「軍曹」と呼ばれ、最近では出世して「中尉」とも呼ばれる永瀬二冠。将棋界の序列は既に3位であり、「将軍」や「元帥」と呼ばれてもおかしくはない立場です。

 叡王・王座をあわせ持つ永瀬二冠は、叡王位保持者として豊島将之竜王・名人を挑戦者に迎え、これから叡王戦七番勝負で防衛戦をたたかう予定となっています。第1局予定日は4月12日。もうすぐです。

 名人戦の方は残念ながら延期が決まりました。

 叡王戦はどうなるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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