新型コロナウイルス感染防止のため、将棋公式戦はリモート対局を検討すべきか

ネット対局サイト「将棋倶楽部24」の画面(記事中の画像作成:筆者)

 新型コロナウイルスの感染拡大は、将棋界にも深刻な影響を与えています。

 多くの将棋クラブや将棋教室が休業に追い込まれ、また各種イベントは軒並み中止、延期となりました。終息の見通しも立たない現在、関係者からは悲鳴にも似た声が上がっています。

 多くのプロスポーツが休止となる中で、将棋の対局は現在も続けられています。それは世の人々に、うるおいと希望を与えるものでしょう。

 しかしその対局の実施についても、やはり影響は表れ始めています。里見香奈女流王位に加藤桃子女流三段が挑戦する女流王位戦五番勝負は4月3日開幕予定でしたが、延期が発表されました。

 関係者にとってはまさに苦渋の決断だったでしょう。残念なことに、今後はこうしたケースがさらに増えてしまうおそれもあります。

 タイトル戦は日本各地を転戦します。一方、普段の公式戦は東京・将棋会館、大阪・関西将棋会館の2か所でおこなわれます。棋士はどこに住んでいても、関東か関西、いずれかに所属します。対局者の所属がわかれる際には、どちらかが(ほとんどの場合は下位者が)移動することになります。その移動もまた、ウイルス感染のリスクが生じることでしょう。

 本日4月3日、藤井聡太七段は東京で、竜王戦3組準決勝を戦っています。

 4月から高校3年生となる藤井七段は、愛知県瀬戸市に住んでいます。対局のたびに、東京や大阪へ移動することは大変な負担でしょう。それに加えて現在の状況では、将棋界の宝に、万が一のことが起こるかもしれません。

 4月1日。日本将棋連盟は今後の見解を示しました。

 連盟の方針としては、できうる限りの予防をして、できうる限り対局は継続していく、ということのようです。

 しかし今後は状況次第で、対局継続が困難な状況に追い込まれる可能性もあるでしょう。

 もし棋士、女流棋士、関係者の中から一人でも感染者が現れれば、業界全体がさらなるピンチに陥るかもしれません。そしてその可能性は、もはや低いとも思えません。

 ほとんどの競技は選手が試合場に行かなければ成立しない中、チェスや囲碁、将棋などは、対局者が離れていてもネットを介して競技が成立するという利点があります。

 社会全体で、職場に出勤しない「テレワーク」が推奨される中、将棋界もリモート対局を検討すべき時に来ているのではないか。多くの関係者やファンがそう考えていることと思います。筆者もまたその一人です。

 もちろん、対局者が不正を疑われないようにして、公正、公平を保つためには、いくつかのハードルが存在します。その上で、今後のためにも、リモート対局は検討されるべきではないでしょうか。

 2007年から2012年に開催された「大和証券杯ネット将棋・最強戦」は公式戦ながら、棋士が自宅で対局をおこなうことが可能でした。その際には、以下のような施策がほどこされました。

対局開始前30分前迄に対局者は「日本将棋連盟」が準備したカメラを設置し、対局時に立会人がモニター画面上にて確認をする。

立会人は日本将棋連盟が定めた1名とし、対局時には東京・将棋会館または関西将棋会館内で立ち会い、対局画面及びカメラ映像画面を見守り、トラブルがおきた場合には裁定を下す。

「ネット対局審判員」は日本将棋連盟が任命し派遣した者とし、対局開始前の対局者の確認と立会人への連絡、トラブルがおきた場合の立会人への状況報告を行うものとする。

出典:大和証券杯ネット将棋・最強戦、対局規定概要

 ネット環境やIT技術がさらに進化した現在、リモート対局は十分に可能でしょう。

「将棋は盤をはさんで両対局者が向き合うのが古来からの伝統。またこれだけ将棋ソフトが強くなった現在、不正がおこってしまうかもしれない。リモート対局するぐらいなら、もう公式戦は延期か中止にした方がいい」

 もしかしたらそういう意見もあるかもしれません。しかし多くのファンのため、プレイヤーファーストの上で、現実的に対局を続けていく方策を検討してもらいたいものです。

 後世、棋聖と称えられた囲碁の本因坊秀策(1829-1862)は、若くして感染症のコレラで亡くなっています。

その年、江戸ではコレラが大流行し、大所帯の本因坊家でも多くの患者が発生しました。秀策は自らの危険もかえりみず看病にあたり、精進による体力の衰えもあったのか、コレラに感染して逝去してしまいます。享年三十四歳という若さでした。

出典:本因坊秀策囲碁記念館

 棋聖秀策の悲劇が現代で繰り返されないよう、くれぐれも願いたいものです。