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棋聖戦準々決勝・菅井竜也八段(27)-藤井聡太七段(17)戦は千日手成立! 同日指し直しの死闘へ

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月31日。大阪・関西将棋会館において第91期ヒューリック杯棋聖戦・決勝トーナメント2回戦(準々決勝)菅井竜也八段(27歳)-藤井聡太七段(17歳)戦がおこなわれています。

 10時に始まった対局は18時24分、同一局面が4回生じて、131手で千日手が成立しました。持ち時間4時間のうち、残り時間は菅井1時間32分。藤井3分。

 規定により、先後を入れ替えて、30分後の18時54分から指し直しとなります。

 指し直し局の持ち時間は千日手局の残り時間に両者57分を足して、菅井2時間29分、藤井1時間0分です。

驚きの千日手

 振り駒の結果、先手は藤井七段と決まりました。

 10時、対局開始。藤井七段はまず茶碗を手にして、お茶を一服。そして初手は飛車先の歩を伸ばしました。

 6手目。振り飛車党の菅井八段は、本局では四間飛車を選びます。

 序盤で微妙な駆け引きがされた後、玉形は菅井八段が穴熊、藤井七段が左美濃となりました。

 31手目。藤井七段は盤上四段目に銀を出ます。振り飛車党のカリスマである藤井猛九段が驚いた手で、これが新時代の感覚なのかもしれません。

 

 菅井八段もぐいと銀を前に進め、藤井七段は左美濃から銀冠へと囲いをアップデートします。

 両者の飛車が中央5筋に回り、攻めの主力が正面からぶつかり合う、観戦者にも見応え十分の中盤戦となりました。

 66手目。菅井八段は天王山の5五に歩を進めます。これは角でタダで取れます。タダで取れるということは、その先に菅井八段が返し技を用意しているに決まっています。

 解説の藤井九段と斎藤慎太郎八段は、その歩を取った先の変化を詳細に調べます。そして多くの変化は菅井よしとなります。

藤井九段「おっ、じゃあ技ありだ。菅井ペースだ」

 そう言われた先に、藤井七段は驚くべき手段を用意していました。それが角銀交換の駒損でしのぐ順です。驚くべきことに、それで局面全体のバランスは取れています。

藤井九段「角銀交換でも大変とは気づきませんでした」

 早指しの名手である菅井八段はほとんど時間を使わず、的確な攻めを続けていきます。たいして藤井七段は中盤で惜しみなく時間を使うスタイル。これは両者ともにいつも通りです。

 藤井七段は飛車を交換する過程で金を取り、駒割は角と金銀交換。逆に駒得となりました。

 一方の菅井八段は自陣は遠くて堅い穴熊。そして手番をにぎり、飛角角と大駒3枚で攻める形を得ています。

 白熱の終盤戦。忙しい局面で藤井七段は、落ち着き払った渋くて有効な手を連発します。藤井七段の玉は今にも寄りそうに見えました。しかしきわどいところで菅井八段の攻めを受け止め、反撃に転じました。

 100手目。菅井八段は飛の横利きを止めるために、自陣一段目に桂を打ちます。本当だったら歩ですませたいところですが、藤井七段はうまく菅井八段を歩切れにしていました。

 桂を打った後、菅井八段はトイレに立ちます。時間は大差で菅井八段よしです。一方で盤上の形勢は、次第に藤井七段に傾いたように見えました。

 菅井八段は馬(成角)を切って、藤井陣に金を打ち込みます。対して藤井七段も金や銀を打って支えます。形勢は、あるいは藤井七段よしかもしれませんが、残り時間が少なく、読みきれなかったのかもしれません。

 仕切り直して、これからもう一局。将棋界の未来をになう両雄の対戦は、死闘となりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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