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王位復位を目指す羽生善治九段(49)リーグ2勝1敗に 実力者・阿部健治郎七段(31)に快勝

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月23日。東京・将棋会館において王位戦リーグ白組▲羽生善治九段(49歳)-△阿部健治郎七段(31歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は17時35分に終局。結果は手で羽生九段の勝ちとなりました。

 リーグ成績は羽生九段2勝1敗。阿部七段は0勝2敗となりました。

羽生九段、挑戦権争いに踏みとどまる

 阿部七段の一手損角換わりに対して、羽生九段は棒銀。阿部七段は向かい飛車にスイッチして、羽生九段の攻めを受けて立つ構えを見せました。

 羽生九段は中盤の早い段階で「そうかー」とつぶやきます。ここで何が「そうかー」なのか。どれだけ深遠なものが見えているのかは、例によって、観戦者には見当もつきません。

 羽生九段は金銀3枚で玉を固めました。一方で阿部七段の陣形はバランス重視。玉は盤面左(後手から見たら右)の7筋に移動して、そばには金1枚しかいません。どちらかといえば、阿部七段の方に苦労が多そうな形です。

 羽生九段は満を持して、右端1筋から仕掛けました。対して阿部七段は自陣に角を打って徹底的に受けます。

 羽生九段は1筋で香を取らせる間に、3筋から攻め入る形を作ります。そして阿部陣に銀を打ち込む痛烈なパンチを浴びせました。

 形勢はほぼ互角。阿部七段は当たりになっている角を逃げるか、それとも取らせるかという選択を迫られます。

 阿部七段は小考で、角を取らせました。このあたりから次第に、形勢は羽生九段に傾いたようです。

 進んで阿部七段は、香を打って羽生九段の飛車を生け捕りにしました。対して羽生九段は飛車を切り捨て、手薄い7筋の阿部玉上部から迫ります。玉から3路離れた4筋には金銀銀銀と4枚のタワーができていますが、これが玉の守りに参加していないのが、阿部七段にとってはつらいところです。

 優位に立ってから、羽生九段の終盤の寄せはゆるみないものでした。的確に阿部玉を受けなしに追い込んで、金銀が待つ方に逃しません。

 実力者の阿部七段にしてすでに粘れない展開で、投了もやむなしというところ。比較的早い時間での終局となりました。

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 羽生九段は1敗をキープして、挑戦権争いに踏みとどまりました。一方の阿部七段は2敗目。今後はリーグ残留を目指しての戦いとなりそうです。

 白組は明日24日、▲藤井聡太七段(2勝0敗)-△稲葉陽八段(1勝1敗)戦がおこなわれます。こちらも注目の一番です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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