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西山朋佳女流三冠(24)竜王戦6組ベスト8進出 青野照市九段(67)に総手数57手、消費12分で快勝

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月9日。東京・将棋会館において第33期竜王戦6組3回戦▲西山朋佳女流三冠(24歳)-△青野照市九段(67歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は14時27分に終局。結果は57手で西山女流三冠の勝ちとなりました。

 西山女流三冠はこれでベスト8に進出。次戦で松本佳介六段-長谷部浩平四段戦の勝者と対戦します。

西山女流三冠、実力発揮の快勝

 振り駒の結果、先手は西山女流三冠。振り飛車党の西山女流三冠は、5筋位取り中飛車の作戦を取りました。

 青野九段は相手の角が一瞬浮き駒となるタイミングで、相手の5筋の位に向かって反発します。互いの駒組が進む前に、歩がぶつかって、一触即発の形となりました。

 西山女流三冠は経験、研究ともに十分な形なのか、時間をほとんど使わず、気合よく指し進めます。

 青野九段が中段に桂を跳ねて、本格的な戦いが始まりました。青野九段は玉側の端をからめて戦線を拡大します。対して西山女流三冠は相手の桂をじっと取りにいきました。

 青野九段が小刻みに時間を使う間にも読んでいるのでしょう。西山女流三冠の方は依然、ほとんど時間を使いません。

 互いに相手陣に角が成りこんだところでは、西山女流三冠優勢がはっきりしました。自玉をしばる桂をはずしながら飛車が転換し、端から相手陣にまで成り込む展開となっては勝勢。青野九段も粘れない展開となったようです。

 西山女流三冠は持ち時間5時間のうち、わずか12分の消費で快勝。ベスト8進出を決めました。

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 奨励会員としての西山三段が先日の三段リーグで、実に惜しいところで四段昇段を逃したのは、既報の通りです。

 竜王戦6組で、過去にベスト8まで女性が進出したのは初めてです。どこまで勝ち進むのか、非常に注目です。

 ちなみに新人王戦で奨励会三段が優勝すると、三段リーグで次点1回の扱いとなります(次点2回で四段昇段)。

 もし竜王戦6組で優勝となれば、当然快挙です。ただし新人王戦のように、棋士を目指す上での何かしらの特典の有無については、現在のところは明文化されていないようです。

 今期の西山女流三冠は女流タイトルホルダーの立場ですので、そのあたりもまた微妙なところですが、もしこの先も快進撃が進めば、何かしらの話は出てくるのかもしれません。もちろん竜王位を獲得すれば、必然的にそうなるでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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