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師匠の石田和雄九段(72)も歓喜の声 早熟の天才・佐々木勇気七段(25)ついにC級1組卒業!

松本博文将棋ライター
(記事中の写真撮影・画像作成:筆者)

 3月3日。東京・将棋会館においてC級1組最終10回戦▲宮田敦史七段(38歳)-△佐々木勇気七段(25歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は21時44分に終局。結果は102手で佐々木七段の勝ちとなりました。

 佐々木七段はこれで9勝1敗。念願の昇級を決めました。

 また藤井聡太七段は10戦全勝を達成しています。

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 宮田七段の先手で、矢倉模様の立ち上がりから、居飛車の力戦となりました。佐々木七段の注文で、宮田七段は飛車先の歩を交換した後、横歩を取ります。

 宮田七段は1歩得の実利を得ますが、飛車は中段にとどまったまま、窮屈な形となります。微妙なバランスを保ったまま、難しい中盤戦が続きました。

 佐々木七段は自陣に角を打ち、宮田陣の弱点である桂頭を攻めます。対して宮田七段も自陣に角を打ち、佐々木陣に深く利かせます。

 C級1組順位戦の持ち時間は各6時間(チェスクロック使用)。佐々木七段は時間をめいっぱい使って考えます。そして夕食休憩前の段階で、残りは1時間半を切りました。

 佐々木七段の師匠である石田和雄九段は、ずっと愛弟子の佐々木七段の対局をタブレットで観戦していました。

石田九段「もう時間えらい使ってるから、自分で負けちゃうんじゃないかな、と思ってたんだよ! 本当に・・・。勇気が時間使って、どんどんわるくなってたみたいじゃない」

 佐々木七段は時間を使った割には、それほどの成果が上がっていなかったかもしれません。

 夕食休憩の段階で、宮田七段は選択を迫られました。窮屈になっている飛車を切って攻めるか。それとも当たりになっている桂を跳ね出すか。

 宮田七段は前者を選びました。そしてこの手を境に、形勢は次第と佐々木七段に傾いたようです。

 佐々木七段は中段に飛車を打ち、宮田陣に成り込んで、駒を取って乱します。飛車は再び宮田七段の手に戻りますが、佐々木七段は手にした香を攻防の急所の6筋に据え、大局を制します。

 佐々木七段は一手勝ちを読み切って寄せ合い、最後は6筋に打った香が宮田陣に成り込んで、そこで終局となりました。

 佐々木七段はこれで9勝1敗。ついに昇級を勝ち取りました。

 以下は石田九段の言葉です。

石田九段「本当に負けるかもしれないと思ったよ、もう・・・! ああ・・・よかったよ。本当によかった。勇気もここで上がらないと腐っちゃうよ。これでB2に行くのと、C1にいるのでは、えらい違いだ。今度また(B2で)藤井君とやれるかもしれないじゃない。やりたがってんだよ、本人が。みんなね、少年時代にやってたライバルたち(永瀬拓矢二冠、菅井竜也八段、斎藤慎太郎八段など)がB1とかA級とか行って、タイトルまで取っちゃってるわけですからね。でも、これで本人もだいぶん気分が晴れたんじゃあないでしょうか」

 C級1組からB級2組へは、藤井聡太七段、佐々木勇気七段という精鋭が昇級します。来期B級2組は、大注目の激戦区となりそうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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