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王者・羽生善治九段(49歳)と王者候補・藤井聡太七段(17歳)3回目の対戦開始 王位戦リーグ1回戦

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 2月18日。東京・将棋会館において第61期王位戦リーグ白組1回戦▲羽生善治九段(49歳)-△藤井聡太七段(17歳)戦が始まりました。

 AbemaTVではこの注目の一戦を木村一基王位(46歳)が解説しています。木村王位といえば昨年、史上最年長で初タイトルを獲得したことで話題となりました。

 木村現王位は前期王位戦においては、挑戦者決定戦で羽生九段に勝って、王位挑戦権を獲得しました。

 今期、木村王位に挑戦するのは誰か。

 木村-羽生戦となれば、これまで何度も戦われてきた、現代のゴールデンカードの1つの再現と言えるでしょう。

 羽生九段は実績という点で、すでに前人未到の領域に達し、現在は無人の荒野を一人突き進む形となっています。タイトル獲得数は99期。節目となる100期をいつ達成するかについては、近年の将棋界の重大な注目ポイントです。

 一方で木村-藤井聡太戦は、史上最年長でタイトルを初めて獲得した円熟のベテランに、将棋界のあらゆる最年少記録を更新しつつある若者が挑戦するという構図です。

 王位戦リーグ入りもまた、藤井七段は最年少記録を作っています。

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 木村-羽生戦。木村-藤井聡太戦。どちらの七番勝負も見てみたいところです。

「羽生九段、藤井七段、どちらにも勝ってほしい」

 それが将棋ファン心理でしょう。しかし現実には、どちらかは途中で敗退となります。一方で、

「みんな負ければいいな」

 と何度か正直な思いを口にする木村王位。現実には誰か一人、実力と勢いある棋士が勝ち上がって、木村王位に挑戦することになります。

 最近のトピックとしては、羽生九段は1月29日、A級順位戦で木村王位を降して、残留を決めています。

 藤井七段は2月11日、朝日杯準決勝で優勝した千田翔太七段に敗れ、3連覇は逸しました。

 2018年(2017年度)、朝日杯準決勝で藤井五段が羽生竜王(肩書はいずれも当時)を破って初優勝した時から、2年経ったことになります。

 2019年の王将戦リーグでも藤井七段が勝っています。

 以上、両者の過去の公式戦対戦成績は、藤井七段の2連勝です。

 藤井聡太七段は初手を指す前に、いつものように茶碗を手にして、お茶を一口飲みます。そして茶碗を置いた後、飛車先の歩を一つ前に進めました。

 羽生九段はオールラウンダーです。その気になれば、居飛車、振り飛車、なんでも自在に指せます。しかし羽生九段はほぼ一貫して、相手の得意から逃げずに戦ってきました。本局もまた、藤井七段の得意である角換わり腰掛銀を正面から受けて立ちます。

 羽生九段はうしろ頭が少し跳ねています。こうした時の羽生九段は、一段と強い印象もあります(統計データはありません)。

 駒がぶつかった後の59手目。11時半少し前に、藤井七段は3筋の歩を突き出しました。これが前例にはない新工夫のようです。時間の使い方からして、事前に周到に用意された一手でしょう。

 解説の木村一基王位と三浦弘行九段の検討によれば、これはなかなかよい手のようです。対して羽生九段はどう対応するか。

 羽生九段は次の手を指さず、12時、昼食休憩に入りました。再開は12時40分。持ち時間は各4時間で、通例では夕方から夜頃に終局となります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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