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朝日杯優勝は果たして誰か? 14時30分から永瀬拓矢二冠(27)と千田翔太七段(25)の決勝戦

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 2月11日。東京・有楽町朝日ホールにおいて第13回朝日杯将棋オープン戦準決勝の2局がおこなわれました。千田翔太七段(25歳)は藤井聡太七段(17歳)に勝ち。また永瀬拓矢二冠(27歳)は阿久津主税八段(37歳)に勝って決勝に進出しました。

 決勝の永瀬二冠-千田七段戦は14時30分から始まります。

永瀬二冠、熱戦を制して初の決勝進出

 ▲千田翔太七段-△藤井聡太七段戦は12時5分、千田七段の勝ちとなりました。

 大盤解説会場で、両対局者は次のように語っていました。

千田「こちらの攻めがうまくつながるかどうかという将棋で、勢いよく指さなければならない展開だと思いました。(終盤に入ったあたりで)形勢は正しく指せば勝ちに近づくと思いましたけれども、まだ油断ならない局面が続くと思っていました。決勝も引き続きいい将棋を指したいと思います」

藤井「千田七段の方から強く踏み込まれて、こちらもいくつか分岐点があったかなと思うんですけど、その中で、正しい手を選択できずに形勢を損ねてしまったのかな、という気がします。▲6一飛(王手銀取り)から▲6五飛成と銀を取られたあたりではちょっと厳しくなってしまっているのかな、と思いました。(3連覇を逃した点については)また実力をつけて頑張りたいと思います」

 ベスト4で藤井七段以外に優勝経験があるのは阿久津八段でした。

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阿久津「もうだいぶ前・・・。自分ではそんなに時間が経ってる感じはしなかったんですけど、もう11年も前ということで。当時は自分はかなり若手の方で来てたはずなんですけど、今日はもう若手に囲まれて『圧倒的おじさんだな』と思いながら来たんですが」

 阿久津八段は局後にそう語っていました。

 ▲永瀬拓矢二冠-△阿久津主税八段戦は相掛かりの戦型となりました。▲千田-△藤井戦がハイペースで進む中、比較的ゆったりとした進行となりました。

 永瀬二冠は相手の注文に乗って、飛車で阿久津陣の歩を取ります。阿久津八段は歩を損した代償に、飛車を追いながら、攻め駒を手早く前に進めます。

 序盤でまずリードを奪ったのは、永瀬二冠でした。

阿久津「ちょっと序盤の工夫が少し足りなかったというか。歩損をしているわりに悠長に指しすぎて・・・。▲3五歩と初めに突かれたところで、歩損している上に駒が立ち遅れてしまったので、もう少し早い動きで先手をけん制しなくちゃいけなかったかなという風に思っています」

 ただしそこから阿久津八段が挽回して、中盤では形勢はほぼ互角となりました。

永瀬「一応、相掛かりは用意してきた作戦ではあったんですけれど、序盤はわりとうまく進行できたかと思うのですが、中盤で、そこからポイントをあげることがなかなかできずに、少し自信のない局面で中盤は推移してしまいました」

 ▲千田-△藤井戦が最終盤を迎えた頃、こちらの対局は熱のこもった中盤戦たけなわでした。

 阿久津八段が攻めてきたのに対して、永瀬二冠は中段に金を打ちつけます。これが善悪を超えて、いかにも永瀬流という一手でした。

阿久津「中盤戦で▲8六金とか△7四銀とか、ちょっと永瀬さんらしいというか、ちょっと変なところに金とか銀打ち合うあたりは少し難しくなったように感じたんですが。そこからも、そうですね、永瀬さんには崩れずにというか、うまく指されて」

 そして形勢互角のまま、いよいよ終盤戦を迎えました。そこで抜け出したのは永瀬二冠の方でした。

阿久津「▲1五歩と端を突かれたあたりからちょっと相手の方が攻めがわかりやすくなってしまって、苦しくなったように思います。中盤の細かいところが、もう少しうまく指していればいい勝負の順があったんじゃないかな、というところで。力が、ちょっと足りなかったかな、と思っています」

 最後は一手違いの寄せ合いとなり、一足早く永瀬二冠が阿久津玉を寄せ切りました。

 永瀬二冠は初の決勝進出となりました。

「最近、あまり結果を見ないようにしているので難しいですけど、注目して見ていただける機会ですので、いい将棋を指して、皆さんに『見てよかったな』と思えるような将棋を指せればと思います」

阿久津「若い強い人たちがたくさんいたんで、思い切って自分らしいというか、ぶつかっていこうかなと思ってたんですが、永瀬さんに跳ね返されて、午後が指せなくなったのは残念です」

 どちらが勝っても初優勝。永瀬二冠と千田七段の決勝戦は、14時30分から始まります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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