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A級残留を目指す羽生善治九段(49)逆転で大きな3勝目 深夜の大熱戦で久保利明九段(44)を降す

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月24日。大阪・関西将棋会館においてA級順位戦▲羽生善治九段(49歳)-△久保利明九段(44歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は25時0分に終了。結果は173手で羽生九段の勝ちとなりました。

 勝った羽生九段は3勝4敗。残留を争う大きな一番を制しました。

 敗れた久保九段は1勝6敗。いっそう厳しい星取りとなりました。

これぞ順位戦、これぞ羽生の逆転劇

 A級以上連続27期を誇る羽生九段は、過去に負け越しは1度しかありません。その羽生九段が今期はピンチに立たされています。一方の久保九段もA級は通算13期。実績十分の両者による、残留を目指しての大きな一番となりました。

 久保九段が四間飛車に振って、戦形は相穴熊。百戦錬磨の両者による繊細な駆け引きの後、駒がぶつかって戦いが始まったのは夕食休憩前でした。

 コンピュータ将棋ソフトの評価を見る限りでは、中盤ではずっと、久保九段がややリードして曲面は推移していたようです。

 互いに相手の金銀を削り合う相穴熊の終盤戦。久保陣は2枚の金をはがされたものの、自陣に引き成った飛車(龍)の威力が大きく、久保九段がはっきり優位を築きました。

 さすがの羽生九段も追い込まれたか・・・。そう思われたところから、これまでに何度も巻き返してきたのが羽生九段です。緩急自在の指し回しで差を詰めていき、いつしか勝敗不明となりました。

 日付が変わった深夜。両者の残り時間が切迫する中で、これぞ順位戦という熱い終盤戦が続いていきます。

 久保九段が持ち駒を温存しで、金を打たずに受けたところから、羽生九段が猛スパートをかけます。そして久保玉を受けなしに追い込みます。結果は羽生九段の逆転勝ちとなりました。

 東京でおこなわれ、少し前に終わった▲木村一基王位-△三浦弘行九段戦では、木村王位が勝ちました。その結果、三浦九段の名人挑戦の可能性が消え、渡辺明三冠が初の名人挑戦が決まっていました。

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 羽生九段は大きく息をつきました。一方で、久保九段はさらに苦しい状況に追い込まれました。しかしまだ降級が決まったわけではありません。名人挑戦の渡辺三冠をのぞけば、7回戦を終了した時点で残留が決まっているのは、4勝3敗勢上位の広瀬章人八段ただ一人です。

 「ラス前」と呼ばれるA級8回戦一斉対局は、今からそれほど日をおかず、来週1月29日におこなわれます。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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