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渡辺明王将(35)に広瀬章人八段(32)が挑む王将戦七番勝負開幕 第1局は矢倉の戦いに

松本博文将棋ライター
王将戦恒例の対局場、掛川城(2011年、筆者撮影)

 1月12日。静岡県掛川市・掛川城において第69期大阪王将杯王将戦七番勝負第1局▲渡辺明王将(35歳)-△広瀬章人八段(32歳)戦が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 対局は9時に始まり、18時に広瀬八段が56手目を封じて、1日目の対局が終了しました。

 明日は9時に広瀬八段の封じ手を開いて、2日目の対局が始まります。

第1局は矢倉

 両者の過去の対戦成績は、渡辺王将(棋王・棋聖)15勝、広瀬八段11勝。トップクラス同士でよく当たる両者は、年末年始にも重要な対局で対戦しています。

 事前に収録され、本日放映されたNHK杯3回戦で、渡辺王将は木村一基王位と対戦。こちらは渡辺王将の負けとなっています。そこまでカウントすると、2019年度成績は30勝7敗(勝率0.811)。年間最高勝率の更新はやや厳しくなってきましたが、依然ハイペースで勝ち続けていることに変わりはありません。

 広瀬八段は21勝13敗(0.618)。竜王戦七番勝負での失冠や、棋王戦で若手棋士に連敗して挑戦権獲得を逸するということもありましたが、大激戦の王将戦リーグを劇的な展開で制して、王将戦七番勝負初登場を決めました。

 将棋界の歳時記では、新年が開ければ王将戦が開幕します。

 第1局の対局場は掛川城、二の丸茶室。王将戦恒例の舞台です。

 振り駒の結果、第1局の先手は渡辺王将。そして戦形は矢倉になりました。お城での対局の際には、囲いが完成すると「○○城のよう」と表現するのが定番です。しかし現代矢倉においては両者が堅城を築くという展開は、むしろまれとなりました。

 渡辺王将が角を動かす手を省略する「早囲い」を志向したのに対して、広瀬八段は銀2枚を中段に繰り出し、速攻を仕掛けました。

 広瀬八段は攻めの銀を渡辺王将の守りの銀と交換します。その点を見れば広瀬八段がポイントをあげたようですが、全体のバランスは取れているようです。進んで、渡辺王将は手にした銀を攻めのポジションに打ったのに対して、広瀬八段は守りに打ちました。

 55手目、渡辺王将は広瀬八段の攻めの桂にプレッシャーをかけるべく、じっと歩を伸ばしました。対して広瀬八段は次の手を指さず、56手目を封じて1日目の対局が終わりました。

 明日2日目は、広瀬八段の封じ手が開封されて始まります。展開によっては、早々に激しい戦いが始まるのかもしれません。通例では、決着がつくのは夕方から夜にかけてです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『あなたに指さる将棋の言葉』(セブン&アイ出版)など。

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