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藤井聡太七段(17)C級1組順位戦で6連勝 競争相手の青嶋未来五段(24)を降す

松本博文将棋ライター
B級2組昇級に向けて快走する藤井七段(画像作成:筆者)

 11月5日。大阪の関西将棋会館において、C級1組順位戦6回戦▲藤井聡太七段(5勝0敗)-△青嶋未来五段(4勝1敗)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は20時24分に終了。結果は95手で藤井七段の勝ちとなりました。

 藤井七段はこれで6連勝。強敵を破り、B級2組昇級に向けてまた一歩前進しました。

藤井七段、矢倉で快勝

 C級1組は5回戦を終えた時点で、藤井七段、佐々木勇気七段、石井健太郎五段が5勝0敗でトップ。次いで4勝1敗勢の順位最上位につけているのが青嶋五段です。

 両者の過去の対戦成績は藤井七段の1勝。昨年の新人王戦準決勝で対戦し、藤井七段が決勝進出を果たしています。(その後は出口若武三段に決勝三番勝負で2連勝して優勝)

 本局は藤井七段が事前に先手と決まっています。藤井七段は初手に飛車先の歩を伸ばすことがほとんどですが、本局では角筋を開けました。そして矢倉の作戦を採用しています。

 序盤で藤井七段がまず動き、2枚の歩を持ち駒にしました。形勢は互角。定跡形からははずれて、手の広い中盤戦となりました。

 方針が難しいところで、青嶋五段は桂を跳ねて攻めに出ました。対して藤井七段は自然に応対。そして序盤で交換した歩を合わせて着実な攻めに出ます。

藤井「悠長だった」「少し自信が持てない感じ」

青嶋「序盤は慎重に来られた。中盤の▲3五歩と合わせたあたりから、いい手を連発された。そこからは完璧に指された」

 藤井七段は控えめに振り返っていますが、いつしか藤井七段がポイントをあげていたようです。

【追記】▲3五歩がどれだけの好手だったのか、青嶋五段がブログで振り返っています。

 そして藤井七段は▲7七桂と玉の近くの桂を跳ねて、青嶋五段の攻めの桂にぶつけました。これが好判断でした。

藤井「▲7七桂とぶつけたあたりからペースを握れた」

青嶋「▲7七桂をぶつけられて、急にダメになった」

 と、局後に両者の見解は一致しました。手にした桂を相手陣を崩す急所に打ち据え、藤井七段よしがはっきりしました。

 終盤、藤井七段は勝勢の局面で、ゆっくり指しても勝てそうなところ、最短の勝ちを目指しました。最後は寄せの教科書に出てきそうな左右はさみうちの形を築いて、青嶋五段の玉を受けなしに追い込みました。

「残り4局、昇級を目指してがんばりたいと思います」

 と藤井七段。昨年度は9勝1敗で昇級を逃しましたが、今期もここまで、安定した戦いぶりで白星を重ねています。競争相手の動向に関わらず、もし10戦全勝すれば、無条件で昇級となります。

 藤井七段は次の7回戦では、やはり昨年9勝1敗で昇級を逃した船江恒平六段と対戦します。船江六段は今期成績は不振ですが、強敵であることに変わりはありません。

 また藤井七段には現在進行中の王将戦リーグについても質問がされました。藤井七段は現在3勝1敗。先日は広瀬章人竜王が白星を伸ばし、4勝1敗で先行しています。

【前記事】

広瀬章人竜王(32)王将戦リーグ暫定トップの4勝目 挑戦権獲得に前進

「周りの結果は気にせずに、自分の対局に全力を尽くしてやりたいなと思っています」

 と藤井七段。残り2戦で久保利明九段、広瀬竜王を順に破れば、5勝1敗で挑戦権を得ることができます。

 今年度終盤に向けて、藤井七段の今後の動向に目が離せないところです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『あなたに指さる将棋の言葉』(セブン&アイ出版)など。

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