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広瀬章人竜王(32)王将戦リーグ暫定トップの4勝目 挑戦権獲得に前進

松本博文将棋ライター
広瀬竜王と豊島名人が星を伸ばす(画像作成:筆者)

 11月4日。東京・将棋会館において▲豊島将之名人(2勝2敗)-△三浦弘行九段(1勝2敗)戦、▲久保利明九段(0勝2敗)-△広瀬章人竜王(3勝1敗)戦がおこなわれました。

 結果はそれぞれ広瀬竜王、豊島名人の勝ちとなりました。

 広瀬竜王はこれで4勝1敗。挑戦権争いの暫定トップに立ちました。広瀬竜王を追って3勝1敗の藤井聡太七段は11月14日に久保九段と対戦します。

 最終戦の3局は11月19日に一斉におこなわれます。中でも広瀬-藤井戦は挑戦権争いにからむ大一番となりそうです。

豊島名人、歩頭に銀を出る攻めで快勝

 広瀬竜王、豊島名人はともに現在、竜王戦七番勝負を戦っている最中です。休日に対局がついているということは、対局者が過密スケジュールをこなしていることを示すものでもあります。

 先に終わったのは、▲豊島-△三浦戦でした。戦形は角換わり。豊島名人は早繰り銀に出ました。三浦九段は腰掛銀から銀矢倉にスイッチして、豊島名人の攻めを受けます。

 中盤、豊島名人が敵陣に角を打ち込んで、激しい戦いが始まりました。そして三浦玉の上部、歩頭に銀を進めます。歩で取られてしまうので銀損となりますが、その代償に突破口を開き、うまく攻めをつなげました。

 終盤も豊島名人がほぼ危なげなく押し切り、83手で勝利。17時48分と、比較的早い時間に終局となりました。

 勝った豊島名人は3勝2敗となり、挑戦権獲得に希望をつなぎました。残すは糸谷八段戦で、勝てばプレーオフ(挑戦者決定戦)に進める可能性があります。

 一方で三浦九段は1勝3敗に。今期の挑戦権獲得の可能性はなくなり、あと2戦は残留を目指しての戦いとなります。

広瀬竜王、初の王将位挑戦に前進

 広瀬竜王は3日前、羽生善治九段に勝っています

【前記事】

広瀬章人竜王(32)正確な終盤力で王将戦リーグ3勝目 羽生善治九段(49)を降す

 ▲久保-△広瀬戦。振り飛車党の久保九段は本局では中飛車を採用しました。対して広瀬竜王は攻めの銀を早めに繰り出し、速攻を仕掛けます。そして桂を得するという戦果を挙げました。互いに相手陣に「と金」を作って寄せに入りますが、そのスピードは広瀬竜王の方が速い。18時41分、92手で広瀬竜王が一手勝ちを収めました。

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 広瀬竜王はこれで4勝1敗。初の王将挑戦に大きく前進しました。藤井聡太七段の最終戦は、今後の将棋界の行方を占う重大な一戦となる可能性が高そうです。

 一方、前王将の久保九段は0勝3敗。渡辺明王将へのリターンマッチの可能性はなくなりましたが、残りを全て勝てば順位がいいだけに、残留の可能性は高そうです。やはり藤井七段との対戦は注目されることでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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