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木村九段、受けて勝って追いついた! 王位戦七番勝負はついにフルセット最終局へ

松本博文将棋ライター
(記事中の写真撮影・画像作成:筆者)

 9月9日・10日。神奈川県秦野市鶴巻温泉「元湯 陣屋」において王位戦七番勝負第6局▲木村一基九段(46歳)-△豊島将之王位(29歳)戦がおこなわれました。9日9時に始まった対局は10日19時1分に終局。結果は119手で挑戦者の木村九段勝ちとなりました。

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 七番勝負はこれで豊島王位3勝、木村九段3勝。「王位」のタイトルの行方はファイナルセットの結果にゆだねられることになりました。

 最終第7局は9月25日・26日、東京都千代田区、都市センターホテルでおこなわれます。

 両者の通算対戦成績は、これで木村8勝、豊島9勝。竜王戦挑戦者決定戦を合わせての「十番勝負」も、最終局を迎えることになります。

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【前記事】

豊島王位いきなりのハードパンチ、木村挑戦者しのげるか? 王位戦第6局2日目

https://news.yahoo.co.jp/byline/matsumotohirofumi/20190910-00141979/

 相掛かりの戦形から、後手番の豊島王位は強烈な攻めを繰り出します。少しでも受け間違えれば、あっという間にそれまでという展開です。

「常に自信が持てない展開でした。苦労が多い、勝ちにくいと思ってずっとやってました。駒得してるんですけど、玉形がちょっとわるいので、ずいぶんプレッシャーがかかる場面が続いて、あまりいいと思ってなかったです」

 局後に木村九段はそうコメントしています。

 ただし、こうした展開こそは、木村九段の十八番だったかもしれません。丁寧に的確に受けているうちに、いつしか形勢は木村九段に傾きました。中段に飛を打ちつけ、豊島王位の攻め駒を着実に減らしていきます。

 なんとか手を作ろうとする豊島王位。さすがに現代将棋界の第一人者であって、なかなか相手を楽にはさせません。

 持ち時間の8時間を両者ほとんど使い切っての終盤戦。ほぼ木村陣での戦いが続く中、木村玉も相当きわどい形になりました。しかし、きわどい形を怖がらないのが木村流。

 最後、木村九段は満を持して反撃に転じ、ほどなく豊島王位の投了となりました。

木村九段、通算9局目のタイトルマッチポイント

 木村九段は今期王位戦が7度目のタイトル挑戦です。

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 木村九段は「あと1勝でタイトル獲得」という大一番を過去に8局経験しています。そしてこれまで、その全てに敗れてきました。次の王位戦第7局は、通算9局目の「タイトルマッチポイント」となります。

 王位戦第7局の時点で46歳3か月の木村九段がもし王位を獲得すれば、初タイトルの年齢の記録としては、ダントツで史上最年長です。

 7回目の挑戦で初タイトル獲得も史上初。

 23歳9か月で四段昇段した棋士がタイトルを取るのも史上最年長記録となります。

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将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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