王位戦七番勝負第4局、タイトル戦最長手数の285手! 木村一基九段が豊島将之王位を降す

(記事中の写真撮影・画像作成:筆者)

 8月20日・21日。兵庫県神戸市・有馬温泉「中の坊 瑞苑」において、王位戦七番勝負第4局▲木村一基九段(46)-△豊島将之王位(29)戦がおこなわれました。

 棋譜はこちらの中継サイトをご覧ください。

 終了時刻は21時12分。総手数は、タイトル戦の番勝負では史上最長となる285手。大熱戦の末に、挑戦者の木村九段が勝ちました。

 木村九段は2連敗のあとの2連勝。初タイトル獲得に向けて、大きな1勝を返しました。

長手数記録を更新して、木村九段が勝利

 第4局は木村九段の先手で、戦形は相掛かりに。角交換から、互いに角を手持ちにした中盤戦となりました。

 豊島王位は長考の末に、自陣に遠見の角を放ちます。そこで1日目が終了しました。

 2日目。木村九段の封じ手は打ったばかりの角筋に、やわらかく歩を伸ばす手でした。ここから木村九段の攻撃陣の周辺で力のこもった攻防が続きます。やがて、木村九段の優位がはっきりとしてきました。

 豊島王位は自身で非勢を認識していました。その中で、粘り強く崩れないように指し続けていきます。やがて中段に玉を泳ぎだし、入玉が視野に入ってきました。

 豊島王位が終始冷静に見えるのに対して、木村九段の身振りは大きく、しきりにぼやきの声が聞かれます。

 流れだけを見れば、木村ファンにとっては、いやな展開に思われたかもしれません。

 しかし、こうした息長い、長手数の入玉模様もまた、木村九段の得意とするところ。今年5月1日、令和初の対局となった王位戦リーグ▲木村九段-△菅井竜也七段戦は、相入玉で菅井七段の点数が足りず、317手で木村九段の勝ちとなっています。

木村32点-菅井22点で、菅井七段が2点足りない
木村32点-菅井22点で、菅井七段が2点足りない

 現在のところ、これが令和の最長手数記録です。

 木村九段は相入玉を目指す方針をはっきりさせました。局後のコメントでは、木村九段は持将棋(引き分け)も覚悟していたようですが、客観的に見れば、点数は大差です。

 持将棋が成立するには、大駒5点、小駒を1点とした場合、24点以上を確保しなければなりません。豊島王位は入玉を果たしたものの、ずっと駒が何枚か足りません。

 豊島王位も最善を尽くして、一時はあやが出てきたかのようにも見えました。入玉模様で駒を取り合う展開は、観戦者には退屈になってしまうこともありますが、本局ではそうした瞬間は、ほとんどなかったように思われます。

 231手目、木村九段の玉も相手陣に入ります。AbemaTVの中継では、駒数が表示されました。この見せ方は、2013年の電王戦で持将棋となった、塚田泰明九段-Puella α戦の前例があります。

 豊島王位はなおも指し続けます。これまでのタイトル戦番勝負での最長手数記録は、1957年度王将戦七番将棋第2局▲升田幸三王将-大山康晴名人戦の271手でした。

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 図では升田王将31点、大山前名人23点。大山前名人の駒が1点足りず、升田王将の勝ちです。

 本局は、その歴史的な一局の手数も超えます。

 やがて、互いに取れる駒も、ほぼなくなりました。点数は木村34点。豊島20点。豊島王位はどうしても点数が足りません。

 21時12分。豊島王位が投了を告げ、ついに大熱戦にも幕がおりました。総手数は、実に285手でした。

 令和の最長手数局(菅井七段戦)に続いて、本局で歴代タイトル戦番勝負の最長手数記録ホルダーともなった木村九段。終わってみれば、実に木村九段らしい一局だったと言えるのかもしれません。この1勝は実に大きい。2連敗から2連勝と押し戻し、悲願の初タイトル獲得に向けて、大きな大きな1勝を挙げたと言えるでしょう。

 竜王戦挑戦者決定戦三番勝負でも対戦している、豊島王位(名人)と木村九段。その第2局は明後日、8月23日におこなわれます。

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 そして王位戦七番勝負第5局は8月27日・28日、徳島市でおこなわれます。

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